内田和弘たちが入ってきた瞬間、雰囲気の異常さを感じ取った。
雲大の先生は、自分の学生たちの表情が深刻で良くないのを見て、すぐに状況を理解した。
ニレイ大学の数学部は、ほぼ独断的と言えるほどで、ここ数年は特に優秀な学生を輩出している。
一方、雲大はこの十年間で白木清一人だけが、ニレイ大学の数学部を圧倒した。
「どうしたんだ?誰も解答に行かないつもりか?」先生は声を落として、怒りを含んだ口調で言った。
「伊藤西紀を探しに行かせましたが、どこにいるか分からないんです……」
学生の言葉を聞いて、先生は思わず眉間を押さえた。
今や雲大は、伊藤西紀一人に面目を保たせている状態だった。
前回の物理学部討論会も、伊藤西紀が全体を仕切っていた。
しかし伊藤西紀は気性が激しく、一度頼むのは良いが、何度も頼むと全く相手にしなくなる。
「伊藤西紀はどこだ??誰か伊藤西紀を見なかったか???」
先生はその場で激怒し、教員グループチャットで一人一人に音声で尋ねた。
しかし伊藤西紀の姿は全く見つからなかった。
十分後。
物理コンテストで入賞した他校の学生たちも来たが、雲大の先生はまだ激怒したまま、彼らの言う伊藤西紀を探していた。
後ろの席の三浦雅子は我慢できずに尋ねた。「この伊藤西紀って、すごい人なの?」
意外にも、内田和弘が口を開いた。
「ああ、雲大の一年生で、情報工学科のトップ、飛び級で入学した。」
この言葉に、皆が思わず羨ましがった。
飛び級?
じゃあ、もしかして自分たちと同い年??
しかも、この交流会は三年生と四年生が参加するものなのに、会場の全員が一年生の救世主を待っている。
すごすぎるじゃないか!
「伊藤西紀はどこだ??情報工学科の教室は探したのか??」先生は頭が割れそうなほど焦っていた。
「探しましたよ、いませんでした。」走ってきた学生は息を切らしていた。
「あの悪い女は絶対に私に逆らっているんだ!」
雲大の先生は顔が歪むほど怒っていた。「前回遅刻を記録したから、きっと覚えているんだ!そこまでする必要があるか!?」
学生:「……」
今更後悔しても始まらない。
後ろの席で。
灰原優歌も思わず眉をひそめ、メッセージを送った。
【どこにいる?】
一分も経たないうちに。
【伊藤西紀:寮でゲームしてる\( ̄︶ ̄)/】