第390章 灰原様を柴田家へ迎える

彼は遠くからその人を見て、数歩追いかけた。

しかし、灰原さんは振り向きもしなかった。

「そうかな?」

灰原優歌は後部座席にだらしなく寄りかかり、その言葉が反問なのか、それとも他の意味なのかわからなかった……

「和田おじさん、今日は先に病院に行きましょう」

灰原優歌は時計を見て、言った。

「かしこまりました、お嬢様」

和田おじさんはすぐに進路を変更し、笑いながら言った。

彼には分かっていた。灰原さんは親孝行な子で、三日に一度は病院に通っていた。

そして途中で。

久保時渡から電話がかかってきた。

「お兄さん?」

灰原優歌は手元の資料をめくりながら、もう一度呼びかけた。

「優歌、授業は終わった?」

男性のその言葉を聞いて、灰原優歌はようやく久保時渡が待っていたことに気付いた。