その時。
灰原優歌が口を開く前に、横にいた金縁眼鏡の男性が突然声をかけた。
「優歌」
灰原優歌は柴田おじい様の前では、とても礼儀正しかった。
「はい?」灰原優歌は彼の方を向いた。
「おじい様の体調がまだよくないから、本邸に戻って暫く一緒に住んでみない?」
柴田陸信の落ち着いた声には、かすかな優しさが滲んでいた。
横にいた柴田裕也と柴田浪は、この展開を見て心の中で兄に拍手を送りたくなった。
さすが兄貴!
優歌がおじい様のことを一番心配していることを知っていて、おじい様を使って家に連れ戻そうとするなんて。
柴田おじい様も戸惑いながら長男の孫を見つめ、疑問符を浮かべた顔をしていた。
「???」
陸信は誰のことを言っているんだ?
「体調がよくない?」灰原優歌は眉をひそめた。