第391章 どうやってこの氷山を温めたの?

その時。

灰原優歌が口を開く前に、横にいた金縁眼鏡の男性が突然声をかけた。

「優歌」

灰原優歌は柴田おじい様の前では、とても礼儀正しかった。

「はい?」灰原優歌は彼の方を向いた。

「おじい様の体調がまだよくないから、本邸に戻って暫く一緒に住んでみない?」

柴田陸信の落ち着いた声には、かすかな優しさが滲んでいた。

横にいた柴田裕也と柴田浪は、この展開を見て心の中で兄に拍手を送りたくなった。

さすが兄貴!

優歌がおじい様のことを一番心配していることを知っていて、おじい様を使って家に連れ戻そうとするなんて。

柴田おじい様も戸惑いながら長男の孫を見つめ、疑問符を浮かべた顔をしていた。

「???」

陸信は誰のことを言っているんだ?

「体調がよくない?」灰原優歌は眉をひそめた。

柴田陸信:「ええ。大病から回復したばかりだから、おじい様はまだしばらく静養が必要なんです。

優歌が付き添ってくれれば、おじい様の回復も早くなると思います」

さっきまで長男の孫が嘘をつくのを軽蔑していた柴田おじい様の目が、すぐに輝いた!

「そうだよ優歌、お前が帰ってきて二年になるのに、おじい様はずっと病院にいて、天倫の楽しみを味わったことがないんだよ」

言い終わると、柴田おじい様はまた激しく咳き込み、非常に虚弱な様子を見せた。

柴田裕也と柴田浪:「?」

孫は名前すら持つ価値がないということか??

その後。

灰原優歌が口を開く前に、遠くから低い声が聞こえてきた。

「優歌」

灰原優歌は一瞬固まり、振り向くと久保時渡と曽田旭が彼女の方へ歩いてくるのが見えた。

「お兄様、どうしてここに?」

この呼び方を聞いて、柴田家の兄弟たちは胸を刺されたような痛みを感じた。

この一ヶ月余り、優歌は一度も彼らのことを兄と呼んでくれなかったような気がする……

「柴田お爺さんが退院したと聞いて、お見舞いの品を持ってきました」

久保時渡は端正な容姿で、能力面でも年配の方々から高く評価されていた。

柴田おじい様は久保時渡に何度か会ったことがあり、当然好感を持っていた。

「見てみろ、時渡の方がお前たちよりよっぽど気が利くじゃないか!」

それを聞いて、男はほとんど気付かれないように口角を上げ、軽やかな口調で答えた。

「当然です」