第392章 柴田おじい様が怒る

以前、彼が久保時渡とバスケをしていた時のことを思い出した。

運動場の半分の女子たちは、久保時渡を見るために来ていたのだ。

柴田陸信は何も言わなかったが、目の奥に暗い色が浮かび、早く優歌を連れ戻したいと思った。

誰に優歌を任せても、安心できなかった。

……

屋敷に戻ると。

灰原優歌と久保時渡は柴田おじい様と一緒に、先頭を歩いていた。

しかし次の瞬間。

柴田おじい様が顔を上げ、居間の見慣れた人影を見た時、笑顔が凍りついた。

柴田裕香だった。

しかも、隣には雲田翁と雲田卓美が座っていた。

「昨夜聞いたところによると、裕香が音楽協会の一次試験に合格したそうだね?」

雲田翁の目に賞賛の色が浮かんだ。

確かに、柴田裕香はこの令嬢界で最も目立つ存在だった。

「一次試験に過ぎません」

柴田裕香は微笑み、隣の柴田の母は雲田翁の褒め言葉を聞いて、喜びを隠しきれない様子だった。

「一次試験に合格しただけでも素晴らしいよ。音楽協会はこれまでアルリアで人材を採用したことがないからね」

雲田翁は感慨深げに言った。

かつて、彼も音楽協会の人々に会う機会があった。

世界の一流の名士たちと談笑するような人々だった。

その言葉が終わるや否や。

雲田翁たちは戻ってきた柴田おじい様たちに気付いた。

しかし雲田卓美は灰原優歌を見ると、目に嘲りの色が浮かんだ。

「そうですね、普通の人には音楽協会なんて手が届きませんものね」

雲田卓美は意図的に笑い、言葉も耳障りに聞こえた。「良い家に生まれただけの人と比べたら、裕香は遥かに優れていますわ」

この言葉が終わると。

雲田卓美は気付かなかったが、近づいてきた人々の表情が暗くなった。

ただ灰原優歌だけは、意味ありげに雲田卓美を見つめ、突然笑い声を漏らした。

雲田卓美は表情を変え、刺激を受けたかのように「何を笑っているの?!」

灰原優歌は物憂げな声で「いいえ、雲田さんはまだお茶をお飲みになりますか?」

この言葉は親切そうに聞こえたが、雲田卓美は灰原優歌が前回熱いお茶を彼女の頭から掛けた出来事を思い出した!

雲田卓美は目を赤く見開き、歯を食いしばって「あなた……」

そして。