第392章 柴田おじい様が怒る

以前、彼が久保時渡とバスケをしていた時のことを思い出した。

運動場の半分の女子たちは、久保時渡を見るために来ていたのだ。

柴田陸信は何も言わなかったが、目の奥に暗い色が浮かび、早く優歌を連れ戻したいと思った。

誰に優歌を任せても、安心できなかった。

……

屋敷に戻ると。

灰原優歌と久保時渡は柴田おじい様と一緒に、先頭を歩いていた。

しかし次の瞬間。

柴田おじい様が顔を上げ、居間の見慣れた人影を見た時、笑顔が凍りついた。

柴田裕香だった。

しかも、隣には雲田翁と雲田卓美が座っていた。

「昨夜聞いたところによると、裕香が音楽協会の一次試験に合格したそうだね?」

雲田翁の目に賞賛の色が浮かんだ。

確かに、柴田裕香はこの令嬢界で最も目立つ存在だった。

「一次試験に過ぎません」