第394章 少女は可愛がられやすい

その言葉を聞いて。

雲田卓美は信じられない様子で久保時渡を見つめた。

久保時渡がなぜ灰原優歌と関係があるの???

雲田卓美は胸の内で複雑な思いが交錯し、灰原優歌のどこがこれほどの人々に愛される価値があるのか、どうしても理解できなかった。

「灰原さん?」

雲田翁は要点を掴んだ。

久保時渡は無関心そうに灰原優歌を一瞥した後、唇を少し歪めて、「可愛らしい子だ」と言った。

その時。

久保時渡のその一言で、雲田翁の表情が凍りついた。

自分は最初から間違った側についていたのではないかと疑い始めた。

もし灰原優歌が久保家のこの方と良い関係を持てるなら、柴田裕香が音楽協会に入ったところで何になる???

「まさか、灰原さんが久保社長とご存知とは思いもよりませんでした……」

雲田翁は表情を硬くした。

しかし、どう考えても久保社長が灰原優歌にこれほど心を寄せる理由が分からなかった。まさか、灰原優歌のあの顔のせい???

確かに、彼は長い人生で多くの美人を見てきたが、柴田家のこの本当の娘の顔は、最も人々を魅了して忘れられない程のものだと認めざるを得なかった。

この時。

柴田の母は全ての話題が灰原優歌に集中することを望まず、すぐに話を遮った。

「お父様、戸田霄先生をずっとお気に入りでしたよね?今回、戸田霄先生が私たちの家で食事をすることを承諾してくださいました。」

「戸田霄先生が我が家に?」

柴田おじい様はそれを聞いて、眉をひそめた。

噂によると、戸田霄は性格が孤高で、どんな食事会にも出席しないとのことだった。

「はい、戸田霄先生は裕香をとても気に入ってくださっているんです。」柴田の母は意図的に柴田裕香の好感度を上げようとした。

しかし、柴田おじい様は柴田の母の意図を見抜いていた。

「それなら何故我が柴田家に来る必要がある?」柴田おじい様は冷淡な口調で言った。

柴田の母は笑顔を保てなくなり、一歩引いて、「お父様、本当に裕香に会いたくないのでしたら、今後裕香は絶対にお父様の邪魔はいたしません。

今回は既に戸田霄先生とお約束してしまいましたので、最後に裕香の顔を立てていただけませんか。」

その言葉を聞いて。

柴田おじい様も思わず眉をひそめ、心が揺らいだ。

確かに、彼も柴田裕香を見て育ててきたのだから。