第395章 優歌は柴田家唯一のお嬢様

「優歌、兄さんが出張から戻って、たくさんのプレゼントを持ってきたわ」

そう言って、柴田陸信は手を伸ばし、灰原優歌に鍵を渡した。

「これは金庫の鍵だ。暗証番号は優歌が自分で設定してくれ」

それを聞いて、灰原優歌は表情を変えずに眉を下げた。「高価すぎるのではないでしょうか?」

通常、金庫に入れるものと言えば、金銀や宝石類がほとんどだ。

しかし、今は柴田おじい様がいるので、断るわけにはいかなかった。

「そんなことはない」

柴田陸信の整った眉目は一層穏やかになり、一言一言丁寧に言った。「だって、優歌は柴田家唯一のお嬢様なんだから」

その言葉が落ちた。

柴田裕香の顔色が急変し、傍らの柴田の母も恨めしそうな目つきを向けた。

なぜ柴田陸信まで、灰原優歌のことに口を出すのか!?

「兄さんの言う通りだ。柴田家のお嬢様のことを、誰かがとやかく言う筋合いはない」傍らにいた柴田裕也が嘲笑うように言った。

柴田浪も負けじと「優歌、三番目の兄さんもたくさんプレゼントを買ってきたよ!」

なぜ自分は金庫を思いつかなかったんだろう??

あんなにたくさんのジュエリーをどうやって一緒に持っていこうか悩んでいたのに。これはクラブのメンバーみたいに、適当に麻袋でプレゼントを包むわけにはいかないからな。

「ありがとうございます」

灰原優歌の目の奥に暗い色が走り、心の中では、これらのものをどうやって返せばいいのか考えていた。

そしてこの時。

柴田の父が突然「優歌、個人的に話したいことがあるんだが」と言い出した。

「晴樹」柴田おじい様は眉をひそめ、目つきを冷たくして、柴田の父の名を呼んだ。

「お父さん、家のことじゃありませんから、ご心配なく」

柴田の父はそう言って、また灰原優歌を見た。「優歌、君は...」

「柴田さん、ここで話していただいて構いません」

灰原優歌の口調はそっけなかった。

明らかに。

たとえ柴田おじい様がいても、灰原優歌は柴田の父に面子を立てるつもりはなかった。

柴田の父は表情を硬くし、雲田卓美たちを一瞥してから、しばらくしてから固く尋ねた。

「優歌、物理のコンテストで一位を取ったそうだね?」

灰原優歌は眉を少し上げただけで、ただ彼を見つめていた。

このまなざしは、なぜか柴田の父の心を不安にさせた。