第351話 ?自重せよ、羽を大切に@Y.G

皆も羨望の眼差しを向けた。内田和弘がこんなに凄いとは思わなかった。

三浦雅子も思わず内田和弘を何度も見つめ、微笑んで「和弘、すごいわね」と言った。

そう言い終わると。

後ろの柴田裕香は無言で、表情は良くなかった。元々、彼女も学年でトップクラスだったが、後半の大問は三問しか解けず、全問正解でも十数点しか取れないだろう。

そのとき。

高校三年生の女子が思わず笑って「先生、何を心配してるんですか?どうせ競技会で最下位、うちの学校と争う人なんていないでしょう」と言った。

その言葉が落ちると。

全員が無意識に前の列の某人を見た。口には出さなかったが、心の中ではこの言葉に同意していた。

落ちこぼれが、何で出しゃばってくるの?

永徳の恥になるじゃないの??

引率の先生はそれを聞いて、何も言わなかったが、スマートフォンを触っている灰原優歌に好ましくない視線を向けた。

……

灰原優歌がスマートフォンを開くと、石川信方がグループチャットで盛り上がっているのが見えた。

【A.M.計算研究所正式メンバー】

【石川信方:ははははは笑い死にそう、試験監督してたら誰に会ったと思う??】

【金井雅守:??】

【主任:???】

他のメンバーも一連の疑問符を送信した。

【石川信方:これからは、私たちのY.G.はもう普通の人じゃない。彼女、Y.G.は、第32回全国高校生物理競技会の優勝者だ!!】

このニュースが発表されると、さらに多くのメンバーから大量の疑問符が送られてきた。

これはどういうこと???

Y.G.がこんな大会にも参加するなんて、人としての道を捨てる気??

【主任:?自重されたし。研究者は自分の羽を大切にすべきです。@Y.G.】

灰原優歌はまぶたを引きつらせ、思い切ってスマートフォンの電源を切った。

一方、石川信方はまだ延々と話し続けていた。

【石川信方:永遠に忘れられない。灰原様が十数分で試験を終えた後、机に伏せて寝る前に、隣の男子が「なんでこんなに難しいんだ」とつぶやくのを聞いて、あの軽蔑と複雑な眼差しを…】

【石川信方:それに、うちの学校の篠井先生が灰原様が寝てるの見て:はぁ、また一人ダメになったか。】

【石川信方:試験会場全体を見渡して、真面目に寝てたのはY.G.だけ。もう駄目だははははは】

……