「確認したけど、今回の募集はYUNさん一人で決めるそうよ」
女性は包み隠さず答えた。
柴田裕香は即座に胸が締め付けられた。「でも、私の枠を確保してくれるって言ったじゃない?!」
そう言うと。
柴田裕香の心には怒りの炎が燃え上がり、目には嫉妬の色が満ちていた。
なぜYUNが戸田霄に認められるの!?
私じゃダメなの??!
「裕香、そんなに焦らなくても。もちろん助けるわよ」
女性は続けた。「これを話したのは、感情に流されないでほしいからよ。YUNはあなたが知ってる学生たちとは違う。差があっても、そう大きくないわ。結局のところ、彼女の実力からすれば、数年後には会長になる可能性だってあるのよ」
「彼女が??!」
柴田裕香は目を真っ赤にして見開いた。
電話の向こうは黙り込んでしまった。
柴田裕香が我に返り、自分とYUNの差を認識するまで。
彼女は歯を食いしばって尋ねた。「分かりました。じゃあ、音楽協会の枠を手に入れるには、どうすればいいんですか?」
それを聞いて、女性は軽く笑った。
「私の部下から聞いたんだけど、YUNは楽譜をとても大切にしているそうよ。だったら——
第四ラウンドで、彼女の新しい楽譜を使ってみたら?」
「彼女の?」
柴田裕香は一瞬固まった。
YUNの楽譜を使う??でもYUNは募集の責任者よ、私を通してくれるの??!
「心配しないで。私が彼女の新しい楽譜を手に入れてあげる。あなたがそれを演奏できれば、彼女はこの件を黙って飲み込むしかないわ」
柴田裕香は拳を握りしめた。「でも、彼女が将来会長になる可能性があるって言いませんでした?」
将来の会長を敵に回して、そのまま居続けられるの?
「私の言うことを聞いていれば、何も心配することはないわ」
その言葉を聞いて、柴田裕香はようやく全てを理解した。
これは女性の仕掛けた罠だ。
一方で彼女を使ってYUNを抑え込み。
もう一方で、YUNに恨まれるようにする。そうすれば、彼女は女性の言いなりになるしかない。
柴田裕香は歯を食いしばり、これが自分の唯一の道だと悟った。
「分かりました。でも、お願いがあります」
「何?」
「コンピューターを勉強している友達がいるんですが、優秀な先生を紹介してもらえませんか?」
……