目に飛び込んできたのは、かなり長い専門的な指導書だった。
長文ではあったが、無駄な言葉は一つもなく、非常に簡潔だった。この主任は近づきがたい人物のようだ。
また、この主任は本当に老師の楽譜を気に入っているようだった……
薄田の父が読み終えると、息子の探るような目が向けられていた。
まるで「もしかして、もう金を渡したの?」と聞いているかのように。
薄田の父:「……」
もし金を渡していたら、こんなに焦る必要があるだろうか??
しかし。
今一番ほっとしているのは、老師が昇級したことだ。
薄田家の危機も去ったのだ。
……
数日が経過。
ネット上では国際音楽協会に関するニュースが広まっていた。
最も話題になっていたのは、音楽協会第二次選考で最年少の柴田裕香だった。
柴田家の偽令嬢事件で裕香は大きな笑い者になったものの。