目に飛び込んできたのは、かなり長い専門的な指導書だった。
長文ではあったが、無駄な言葉は一つもなく、非常に簡潔だった。この主任は近づきがたい人物のようだ。
また、この主任は本当に老師の楽譜を気に入っているようだった……
薄田の父が読み終えると、息子の探るような目が向けられていた。
まるで「もしかして、もう金を渡したの?」と聞いているかのように。
薄田の父:「……」
もし金を渡していたら、こんなに焦る必要があるだろうか??
しかし。
今一番ほっとしているのは、老師が昇級したことだ。
薄田家の危機も去ったのだ。
……
数日が経過。
ネット上では国際音楽協会に関するニュースが広まっていた。
最も話題になっていたのは、音楽協会第二次選考で最年少の柴田裕香だった。
柴田家の偽令嬢事件で裕香は大きな笑い者になったものの。
前回のニレイ十八令嬢舞踏会や今回の音楽協会第二次選考通過は、ネットユーザーの目には完全な逆転劇と映っていた。
ファンも大幅に増え、コメント欄は称賛の声で溢れていた。
【音楽協会の第二次選考に進めるなんて、この美貌と才能を兼ね備えたお嬢様は一体誰!?】
【18歳でピアノツアー、19歳で音楽協会第二次選考まで進出!!ナイス、将来が楽しみ!】
【えー……音楽協会第二次選考って、そんなに誇れることなの?採用されたわけじゃないのに。】
【そんなこと言う人は本当に頭が悪い。国際音楽協会はたった20数名のメンバーで、みんな神様レベル。入れないのが普通で、入れたら奇跡。裕香が第二次選考まで進んだのは、すでにかなりの実力。】
【そう、今回の応募者は1万人以上いたらしいけど、第一次選考で200人まで絞られて、第二次選考通過者はたった20~30人。柴田裕香すごくない?】
【ハハハ音楽協会に30歳以下の正式メンバーがいたら、私の首を切って皆さんにボールとして蹴らせてあげます。】
【まあ、以前は柴田家を離れた裕香が損したと思ってたけど、今では損したのは柴田家の方みたいね。】
【ニレイ十八令嬢舞踏会の時から、この女性はただものじゃないと思ってた!あぁぁ大好き!!!】
……
これらのコメントを見ていた裕香は、唇の端を軽く上げた。
しかし突然、携帯の画面に電話の着信が表示された。
裕香は笑顔が凍りついたが、すぐに電話に出た。