第432章 特別待遇

灰原優歌は入り口まで歩いていくと、この大会が本当に盛り上がっていることに気づいた。

目を上げると、会場で最も多かった応援は、柴田浪と柴田浪のチームに向けられていた。

そのため、灰原優歌はしばらくの間、柴田おじい様の姿を見つけることができなかった。

すぐに、灰原優歌は柴田おじい様に電話をかけた。環境は少しうるさかったが。

「おじい様、中に入りましたか?」

「え?試合会場のことかい?入ったよ。おじいさんは途中でチケットを持ってないことに気づいて、先に楽屋に入ったんだ。」

「はい、それならよかったです。」

灰原優歌が言い終わり、電話を切ろうとした時、柴田おじい様の質問が聞こえた。

「優歌、どこにいるんだい?」

柴田おじい様は一瞬驚き、灰原優歌の方から聞こえる騒がしい声を聞いて、思わず「優歌、おじいさんにチケットを届けに来てくれたのかい?」

「私は…」

灰原優歌が言い終わる前に、隣の女の子が興奮して叫んだ。「きゃあああ!柴田浪!!見て!!!」

灰原優歌は言い直した。「……まだ中に入っていません。」

「それならちょうどいいじゃないか。楽屋に来て、おじいさん一人では観客席にどう行けばいいかわからないんだ。」

灰原優歌はそれを聞いて、すぐに承諾した。

電話を切った後、周りを見回すと、体育広場のスクリーンには主神図の歴代チャンピオンチームの写真が流れていた。

その中で最も多く登場するアルリアの顔は、柴田浪だった。

眉目は冷たく青々しい表情から、時折意気揚々とした様子を見せ、目には常に光があった。

これは灰原優歌に、彼女の夢の中の柴田浪を思い出させた。その目には光と輝きなど何もなく、ただ死んだような暗さだけがあった。

特に前世の死後、柴田浪はクラブのコーチにもならず、鉱山に行って鉱夫になった。

最後には、ある危険な突発事故で、柴田浪は高額な事故賠償金のために、命を捨てることを選んだ。

そして柴田浪が死んだ後になって、柴田陸信と柴田裕也は初めて、前世が亡くなった後、死亡保険金の受取人が彼らに変更されていたことを知った。

しかし。

柴田浪の死亡賠償金を、兄弟二人は受け取りに行かなかった。

そして柴田浪が死んでから七日目に、柴田家は完全に崩壊した。

……

灰原優歌は目に暗い色を隠し、別の番号に電話をかけた。