堀川紀明は横目で彼を見て、何か思い出したかのように、声が冷たくなった。
「そういえば、君もA.M.研究所にいた人間だが、A.M.計算研究所をどう思う?」
内田和弘は堀川紀明の意図的な探りを察知し、「金井様以外では、石川教授もなかなか良い方だと思います」としか言えなかった。
堀川紀明は嘲笑い、傲慢で得意げに言った。「そうだな、石川信方はまあまあだ。この金井雅守は石川信方を育てただけで、A.M.研究所はそのうち潰れるさ」
そう言って、また内田和弘に笑いかけた。「でもセイソウ計算センターは違う。ここ数年、多くの人材が我々のセンターに集まってきている。A.M.計算研究所を追い越すのは時間の問題だ。
しっかり学びなさい。将来、私のこのポジションは君のためにとっておくからね」
それを聞いて、内田和弘の目に光が宿り、すぐさま「ありがとうございます、先生」と言った。
堀川紀明は鼻で笑い、また自分のプロジェクトに取り掛かった。
……
「優歌?優歌??」
隣で柴田浪が小声で彼女を呼んだ。
灰原優歌は我に返り、柴田浪を見た。「どうしたの?」
「今日は土曜日だけど、おじい様と一緒に僕の試合を見に来ない?」柴田浪は尋ねた後、少し緊張した様子で灰原優歌を見つめた。
柴田浪は柴田おじい様がいない時に聞いたのは、灰原優歌が柴田おじい様の前で選択しづらくなることを心配してのことだった。
「行けないわ、ちょっと用事があるの」
灰原優歌がそう言うと、柴田浪の目が少し暗くなり、不自然に拳を握りしめ、無理に笑って言った。
「そう、分かった。優歌も気をつけてね」
柴田裕也は今日、断れないインタビューがあり、さっき出かけたところだった。一方、柴田陸信は仕事を急いでおらず、横で新聞を読んでいた。
彼はその様子をちらりと見ただけで、特に何も言わなかった。
しばらくして。
柴田おじい様が戻ってきて、着替えをし、帽子をかぶると、柴田浪に尋ねた。「これなら、気づかれないだろう?」
柴田浪は慰めるように言った。「大丈夫ですよ。試合会場で誰がおじい様のことを知っているでしょうか」
柴田おじい様は「……」
自分だって顔が利く人間なのに。
「優歌は来ないのか?」