第438話 本社の大ボスに断られる

背後の手が、ようやく離れた。

その時。

小島茂は掃除用具置き場の端から床に倒れ込み、全身びしょ濡れで、惨めな姿だった。

無意識のうちに、灰原優歌の軽い笑い声が聞こえた。

目を上げると、彼女が洗面台の横に立ち、ゆっくりと手を洗っているのが見えた。

「あなたのお父さんはC&Tプロジェクトに介入しているでしょう?息子として、たまには柴田家に手を出し過ぎないよう注意した方がいいんじゃない?」

灰原優歌の言葉は、一字一句ゆっくりと響いたが、なぜか背筋が寒くなった。

この件について、灰原優歌はどうやって知ったのか!?

実は、このプロジェクトは過去5年間、柴田家を筆頭に、他の企業と設立した共同プロジェクトだった。

しかし小島家と柴田家は表面上は友好的でも、内心では反目し合っていた。小島家は早くから柴田家を失脚させる算段をしていた。