第413章 2階の犬の吠え声は、結構怖いね

「じ、じゃあ、私、なんとかしてみます」

佳枝は顔が妙に熱くなり、その後目を輝かせながら、灰原優歌に近寄って小声で言った。「灰原さん、私の席は2階にあるんですが、おばあさまと一緒に来ませんか?」

どうせ彼女の席は端にあって、普段は誰も気にしていない。

灰原優歌は目の前の素直な娘を見て、思わず小さく笑った。

彼女が笑うと、瞳に光が宿ったかのようだった。「ありがとう、お姉さん」

ただし。

上階に着いた時、佳枝は違和感に気付いた。

このお嬢様のおばあさま、どこかで見たことがあるような???

佳枝が考え込んでいると、階段を開けた途端、片原茉子が50代後半の堀川社長の腕を組んでいるところに出くわした。

その瞬間。

佳枝は呆然とした。

一方、片原茉子は佳枝を見るなり、表情が歪みそうになった。

思わず堀川社長の手を放した。

「あなた、ここで何してるの?!」

片原茉子は顔を曇らせて詰問した。

「私は、お客様を...」

佳枝の目に動揺が走り、申し訳なさそうに俯いた。

片原茉子は顔を曇らせ、佳枝が自分に逆らうなんて思ってもみなかった。

彼女が口を開こうとした時、ふと目を上げると林院長の姿が目に入り、慌てふためいた。

隣のあのしつこい老人が、なぜここにいるの??!

だめ!

この二人を久保集団に居させるわけにはいかない!

もしこのしつこい老人が、会社で私が高級マンションに住んでいるだけだと他人に話したら、どうすればいいの??!

林院長も片原茉子のことを認識し、顔に笑みを浮かべた。

「これは片原...」

「私に話しかけないで!あなたのこと知らないわ!」

片原茉子は声を荒げて遮ったが、傍らの灰原優歌の眼差しが冷たくなっていることに気付かなかった。

林院長はいつも物分かりが良かったが、こうして当てこすられた後、顔の笑みも凍りついた。

「和田佳枝、まさか彼女たちと一味じゃないでしょうね??」

片原茉子は皮肉な口調で、声が大きかったため、多くの人の注目を集めた。

「何を言ってるんですか?」

佳枝は顔を真っ青にした。

「何を言ってる?これはもしかして、あなたの魚売りのお母さんのお母さんなの?じゃあこの女は??」

言い終わると。

片原茉子は冷笑し、振り向いて更に皮肉を言おうとしたが、思いがけず冷気を帯びた意味深な瞳と目が合った。