「大丈夫よ、優歌は機嫌を直しやすいから、許してくれるわ」
林院長は微笑んで、この青年が本当に灰原優歌のことを想っているのが分かった。
しかし柴田裕也はそれを聞いて、喉が締め付けられるような感覚を覚え、さらに深く俯いた。その声には、かすかな苦みを帯びた笑いが混じっていた。
「でも、私は許されない罪を犯したんです」
あの時の自分を殺してしまいたいほどの。
柴田裕也は帽子の縁を押さえ、目尻の赤みは見えなかったが、声は少し掠れていた。
彼は虚しく笑って、「許してくれようと許してくれまいと。大丈夫です、私は一生優歌のために尽くします」
優歌の許しを得る資格なんて、彼にはないのだから。
林院長も一瞬驚いたが、すぐに苦笑して、その濁った瞳は世の中を見通しているかのようだった。
林院長は柴田裕也の肩を叩き、袖口を直してあげながら、慈愛に満ちた優しさで「うちの裕也は、本当はいい子なのよね」と言った。
林院長が柴田裕也に会うのは初めてではなかった。
むしろ、柴田裕也は優歌のために彼女の面倒を見たいと、何度も訪ねてきていた。
「おばあちゃんに代わって優歌のことを、よろしく頼めるかしら?」
林院長は柴田裕也と休憩スペースに座り、また苦笑いしながら言った。「以前の優歌は暗くて、とても孤独そうだった。今の優歌は元気そうに見えるけど、目を見ると孤独を感じるの。
でも私にはもう、どれだけの時間が残されているかしら?一生面倒を見続けることはできないわ」
以前は自分が亡くなった後、優歌の面倒を見る人がいないことを心配していた。今は多くの人が優歌を大切にしているのを見て、安心できた。
「おばあちゃんは必ず長生きされますよ」
柴田裕也はそう言って、さらに付け加えた。「優歌の心の中で、おばあちゃんの存在は誰にも代えられません」
……
灰原優歌が戻ってきた時。
林院長は彼女が持っている四つの大きな袋を見た。
いつもと違って買いすぎだとは言わず、むしろ灰原優歌から紙袋を受け取り、柴田裕也に渡した。
柴田裕也に持つように頼んだ。
それに灰原優歌は思わず柴田裕也を見つめた。
しばらく沈黙した後、また口を開いた。「ありがとう」
「優歌、目上の人には礼儀正しくね」林院長は笑いながら注意した。
「……」