堀川紀明は顔を歪めながら見つめていた。
スティーブンまでもが介入してくるとは思いもよらなかった。
これらの研究所が立場を表明するのは、上層部の指示なしではありえないことだった。
そしてこの時。
金井雅守とローシェル医学研究所の発言のおかげで、先日のY.G.に関する噂は徐々に収まっていった。
結局のところ、この世界は一般人とはかけ離れており、彼らが気にすることではなかった。
しかも、今では国内のコンピューター分野のトップである金井雅守までもがY.G.の味方をしている。誰が正しくて誰が間違っているのか、もはや判断が難しい状況だった。
……
柴田家の本邸。
食事を済ませた灰原優歌は、すぐに二階へ上がっていった。
柴田浪は不思議そうに尋ねた。「最近、宿題が多いのか?」
「そうだよ。永徳の宿題の量は、お前が一番よく知ってるだろう?」柴田裕也が言った。
以前、柴田浪も永徳の生徒だった。
柴田裕也は振り向いて尋ねた。「渡様、優歌はあなたの所でも、学校が終わるとすぐ宿題をしていましたか?」
「ああ」
隣の男性は無関心そうに答え、目を伏せたまま、怠惰で軽薄な様子だったが、上がった目尻は人を魅了するものだった。
「優歌は本当に頑張り屋だね」
柴田浪は頷きながら、とても満足そうだった。
しかし。
その言葉が終わるや否や、隣でほとんど話さなかった男性が突然立ち上がった。
「柴田お爺さん、私は上で少し休ませていただきます」
「ああ」
柴田おじい様はすぐに言った。「時渡、お前の部屋は右の廊下の一番目だ」
「はい、ありがとうございます」
久保時渡が階段を上がった後。
彼はすぐにあの少女を探しに行くのではなく、まず客室のドアを開け、シャワーを浴びようと考えていた。
しかし予想外にも、ドアを開けると中は明るく照らされていた。
久保時渡の淡い瞳が次第に深くなり、骨ばった指は相変わらず平然とドアノブに置かれていた。
同時に。
シャワーを済ませ、ベッドに座ってノートパソコンをいじっていた灰原優歌も、物音を聞いて体が固まった。
彼女はすぐに理解した。なぜこの客室がこんなにも清潔だったのかを。
なぜなら、これは久保時渡のために用意された部屋だったのだ。