薄田おじいさんは聞いて、呆然としてしまった。
この小娘が何を言っているのか分からなかった。
しかし薄田修司の目の奥に暗い色が走り、また口を開いた。「機会があれば、おじいさんを連れて挨拶に行きましょう。」
「いや、なぜ久保家に挨拶に行く必要があるんだ?」薄田おじいさんは強く拒否した。
久保家のあの若者とは、十数年前に一度会って以来、もう関わりたくないと思っていた。
「おじいさん、あの時の時渡はまだ小さかったじゃないですか。ただ本当のことを言っただけなのに、なぜそんなに根に持つんですか?」
薄田修司はゆっくりと言った。
薄田おじいさん:「……」
ただ本当のことを言っただけ、なのか???
元々、彼は善意で久保の子供に勉強を教えようとしたのに、その子供は小さい年齢で、人間が解けるような問題を出してきたのか??!
ニレイ大学数学部の学生として、最も古い世代の海外帰りの知識人が、一人の子供に、知能を侮辱された。
これは思い出したくもない過去だった。
吉田麻奈未が去った後も、薄田修司は依然として、薄田おじいさんを久保家に連れて行こうと主張した。
その後、おじいさんは怒って何日も釣り竿とバケツを抱えたまま、階下に降りようとしなかった。
……
翌日。
灰原優歌が家に帰ると、柴田おじい様と一緒に散歩から戻ってきた久保時渡の姿が目に入った。
見たところ、久保時渡はここ数日柴田家の本邸に滞在していて、柴田おじい様との関係もかなり良くなっているようだった。
しかし灰原優歌は挨拶をしただけで、そのまま階上に上がった。
「最近、優歌は何か忙しいのかな?」
柴田おじい様は不思議に思い、また久保時渡の方を向いて、「時渡よ、もしかして何か図々しい若造が、私の大切な優歌に目をつけているんじゃないだろうな?」
久保時渡は灰原優歌の後ろ姿を軽く見やり、また笑って、「ありません。」
「いけない、時渡、お前は今の若者がどれだけ悪いか知らないんだ!」
柴田おじい様は高校生の恋愛に関する悪いニュースを思い出し、とても心配になって、また久保時渡の手を掴んで、「時渡よ、おじいの誕生日会が終わったら、優歌がまたお前のところに戻るだろう。優歌のことをよく見ていてくれ。
悪い若者に連れ去られないようにな!」