第457章 いいえ、あなたは好きです

明らかだった。

柴田陸信は灰原優歌を骨の髄まで可愛がっていた。

この光景を見て、吉田麻奈未の目には羨望の色が満ちていた。

ほら、これが他人の兄だ。

彼女の兄はどうだ？

ふん。

突然。

薄田京香が軽く笑って、「柴田社長は何か誤解されているようですね」

「薄田さんは、私が何を誤解していると思いますか？」柴田陸信は目も上げず、瞳には波風一つない。

しかし、薄田京香は一言も返せなかった。

「あなたがどうやって佐藤知遠と一緒になったのか、誰かに教えてもらう必要がありますか？」柴田陸信の表情は知的で高慢だが、温かみはなく、人を震え上がらせるような威圧感があった。

その瞬間。

薄田京香は思わず足がすくみ、一歩後ずさりした。

彼女は、柴田陸信がこんな些細なことで自分を追い詰めるとは思っていなかった。

「私の優歌は規則を守るのが苦手ですが、薄田さんは規則をしっかり守らないといけませんね」

柴田陸信の黒い瞳は墨のように深く、浅い光を湛え、人の心を見通すような意味を含んでいた。彼は軽く唇を歪め、「結局、彼女が持っているものは生まれながらのものです。でも薄田さんはそうではありません」

言葉が落ちた。

薄田京香の顔は真っ青になり、瞳孔が縮んだ。

柴田陸信は一体何を知っているの？？！

元々、彼女は柴田陸信が業界での自分に関する噂を聞いただけだと思っていた。

しかし今見ると、柴田陸信は知るべきではない何かを知っているようだった。

「申し訳ありませんが、薄田さん、失礼します」

柴田陸信はそう言うと、灰原優歌を連れて立ち去った。

傍らの吉田麻奈未は密かに興奮していた。

「すごい、優歌、あなたのお兄さんかっこよすぎない？？お嫁さん募集中？私はどう？？？」

灰原優歌：「……わからない」

彼女が知っているのは、前世である女性が柴田陸信に叶わぬ恋をして、その結果柴田家全体を破滅させたということだけだった。

そのことを思い出し、灰原優歌は彼女をちらりと見て、「余計なことはしないで」

「へぇ、意外だね、私たちの優歌がブラコンだったなんて」吉田麻奈未は断られても気にせず、まだにやにやしていた。

灰原優歌：「……」

その時。

薄田京香はまだその場に立っていた。