ニレイ十八舞踏会の招待状から、彼女はこの事態が面白くなってきたことを悟った。
あの人が現れたに違いない。
「もしそうだとすれば、これは厄介だな。ローシェルの勢力は複雑すぎる……」戸田霄は思わず眉をひそめた。
柴田裕香はどうやってローシェルの人と知り合ったのだろう?
「調べられるかどうかは、どちらでもいい。」
「はい。」
戸田霄は返事をして、「優歌、もう一つ話がある。」
「何?」
「音楽協会の選抜最終ラウンド、せめて見に行ってくれないか。」戸田霄はため息をつき、さらに続けた。
「映像で選考するんじゃないの?」
戸田霄は目を引きつらせ、「最終ラウンドは、他の二人の補佐役も雲城に来る。
その時、人に会いたくないなら、舞台裏から発言すればいいよ、どう?」
灰原優歌:「……いいよ。」
もう、ここまで話が進んでしまった。
……
時は流れ。
ピアノ室にて。
内田和弘は感動して振り返り、「裕香、これは君の新作?」
この二日間、柴田裕香は授業時間以外、ほとんどこの楽譜の練習をしていた。
柴田裕香は目を伏せ、その眼差しは見えなかったが、笑いながら言った。「先生に手伝ってもらって直したの、曲はどう?」
「とても良い曲だよ。」
内田和弘はお世辞ではなく、素人の彼でさえ、柴田裕香のこの曲が以前と比べて質的な飛躍を遂げていることを感じ取れた。
「先生の修正のおかげよ。」
柴田裕香はわざと言った、「どうしたの?私の演奏は前は良くなかった?」
「良かったよ。ただ、この曲があまりにも素晴らしすぎる。」
内田和弘は近寄って、柴田裕香の頭を撫でながら笑って言った。「上達を褒められても嬉しくない?」
柴田裕香は黙っていた。
内田和弘は他のことに気付かず、ただ言った。「そうだ裕香、この間、僕は堀川教授から多くのことを学んだよ。
本当にありがとう。君がいなければ、堀川教授が僕を生徒として受け入れてくれることはなかった。」
「和弘、私に感謝する必要はないわ。この期間、私を見捨てた人は多かったけど、あなたと母だけは、迷わず私の味方でいてくれた。
感謝すべきは私の方よ。」
それを聞いて。
内田和弘の目に心痛める色が過ぎり、柴田裕香が大きく変わったと感じた。