もっと素敵な笑顔になる

しかし彼女は何の反応も示さず、海野桜が彼女を傷つけたことを全く恨んでいないようだった。

海野桜は彼らを一瞥し、淡く笑って言った。「別に、ただ様子を見に来ただけよ」

林馨が以前の林馨のままなのか、すべてが変わってしまったのかを確かめに来ただけ。

彼女はただ、自分が本当に転生したのかを確認したかっただけだ。

東山裕は彼女が善意で林馨を見に来たとは思わず、また何か問題を起こしに来たのだと思った。

「見終わったのか？」彼の声には軽い警告が込められていた。

「ええ、見終わったわ。どうぞ話を続けて」海野桜は明るく笑って、その場を去った。

東山裕は少し戸惑った。彼女は何を笑っているの？しかもあんなに嬉しそうに。

なぜか、彼は海野桜が目覚めてから、少し違う人になったような気がした。

彼女の反応は、いつも彼の予想を裏切る……

……

「張本さん、片付けよう。帰るわ」病室に戻るなり、海野桜は宣言した。

張本さんは諭すように言った。「お嬢様、目覚めたばかりですから、もう一回診察を受けて、大丈夫だと確認してから帰りましょう」

「張本さん、私は元気だよ。ただここにいたくないの。すぐに帰ろう」これから東山裕と林馨のことを気にしなくとも、彼らを見たくはなかった。

彼女は一刻も早くここを出て、この愛らしい、美しい世界を見たかった。

張本さんは彼女の気持ちを読み間違えて、「お嬢様、気にしないでください。林馨が旦那様の秘書になったとしても、あなたには及びません。あなたの地位は…」

海野桜は笑いながら彼女の言葉を遮った。「張本さん、慰める必要はないわ。正直に言うと、彼ら二人がどんな関係でも、私には関係ないの！」

張本さんは呆然とし、「お嬢様、そんな意地を張るようなことをおっしゃるのですか？」と聞き返した。

海野桜は目を輝かせて軽やかに笑った。「そう見える？」

一度死んでみて初めて分かった。恋だの愛だの、全くくだらないものだと。

元気に生きて、楽しく生きることこそが、最高の幸せなのだ！

せっかく転生できたのに、自分から不愉快な目に遭うなんて馬鹿げている。二人は好きにすればいい、誰も彼女の自由な生活を邪魔しないでほしい。

張本さんは彼女からネガティブな感情を全く感じ取れず、驚いて言った。「お嬢様、今回はなんだか違いますね……」

「どこが違うの？」

「まるで、まるで一晩で大人になられたみたいです」

海野桜は彼女の意図を理解し、冗談めかして言った。「私はとっくに大人になってたでしょう？」

「いいえ、今のお嬢様はもっと良くなられました」張本さんは安堵の表情で笑った。「お嬢様、このままでいいんです。こんなに素敵で、笑顔も綺麗です」

以前のように毎日陰鬱な表情をして、若くして怨みと苦しみに満ちた顔をしているのではなく。

海野桜はさらに明るく笑った。「張本さん、これからもっと素敵な笑顔を見せるわ。さあ、片付けよう。帰るわよ」

「はい、承知しました」張本さんはにっこり笑ったが、ふとドアの前に東山裕が現れたのに気づき、「旦那様……」と急に改まった口調になった。

海野桜も彼を見たが、彼女の顔から明るい笑顔が消え、まるで見知らぬ人を見ているかのような冷静な目で彼を見つめた。

先ほどの二人の会話を、東山裕はすべて聞いていた。

彼は海野桜が本当に自分のことを諦め、何も気にしなくなったとは思わなかった。

結局、彼女が彼をどれほど愛していたか、どれほど狂おしいまでに愛していたかを、彼は誰よりもよく知っていたのだから。

彼女が殺されたとしても、彼を諦めないだろうということも、彼は知っていた。

だから、これは演技に違いない！

ふん、駆け引きのつもりか？

東山裕は嘲笑うように唇を歪め、軽蔑的に大股で立ち去った。

海野桜は彼の態度など気にも留めなかった。これからは彼が自分をどう見ようと、どうでもよかった。