第22章 彼女の柔らかな体

そして笑った瞬間、鏡に映る背の高い男性の姿が目に入った。

彼女は突然、東山裕の深い眼差しと目が合い、笑顔を収めるのを忘れてしまった。

男の漆黒の瞳も一瞬凝固した。

その一瞬、まるで運命的な出会いのように、彼女の容姿と笑顔が、彼の心に波紋を起こしたかのようだった。

東山裕は気づかなかったが、彼女を見る彼の眼差しに、熱い光が宿っていた。

「社長……」彼を見て、メイクアップアーティストたちは慌てて挨拶した。

東山裕は軽く頷き、視線は依然として鏡に映る海野桜に釘付けだった。

他の人々は空気を読んで退室し、部屋には二人だけが残された。

海野桜はとっくに彼の視線を避け、宝石が散りばめられたパーティーバッグを手に立ち上がり、彼の方を向いて「行きましょう、準備できました」と言った。

東山裕は彼女を一瞥し、声から冷たさが幾分抜けて「今夜どうすべきか、言わなくても分かっているだろう」と言った。

海野桜はわざと「私が協力的なら、離婚してくれるの?」と聞き返した。

男の目が突然冷たくなり、「お前がいなければ、今日このような面倒は起きなかった!」

「ちょっとした問題よ。それに、みんなに予防線を張っておくのもいいわ。どうせ私たち、いずれ離婚するんだから」海野桜は何でもないように言った。

東山裕は眉間にしわを寄せ、複雑な表情を浮かべた。

彼は彼女が何をしようとしているのか、もう分からなくなっていた。

まさか本当に離婚したいのだろうか?

東山裕には分からなかった。なぜ彼女が突然態度を大きく変えたのか。おそらく駆け引きなのか、演技が上手すぎるのか……

しかし何であれ、いずれ真相を突き止めてみせる!

そして今の彼女の態度は、彼にとって満足のいくものだった。たとえ演技だとしても、彼に執着しないでいてくれれば良かった。

同時に、彼は心の奥底にある微かな違和感を完全に無視していた。

「行こう」東山裕は左腕を曲げた。

海野桜は彼の誘いを理解していないふりをして、自分で前に歩き出した。

彼の腕なんか組むものか!

しかし彼女の履いているハイヒールは高すぎて、ヒールが細すぎて、数歩歩いただけで突然足を捻ってしまった……

「あっ……」海野桜は小さく叫び、きっと床に倒れてしまうと思った。

千載一遇の瞬間、彼女の腰に突然力強い腕が回された!