「今回の社長の離婚騒動に関係があるようで、職務怠慢で降格されたそうです。」
「……」海野桜は愕然とした。
離婚のニュースは本当に林馨が流したのか?
もし彼女だとしたら、東山裕は彼女に対して本当に特別な扱いをしているわね。処罰は降格だけで済んだなんて。
もしかしたら、彼女が考えているのとは違うのかもしれない……まあ、どうせ自分には関係ないことだし。
ただ、彼女の心情はとても複雑で微妙だった。
彼女は自分の転生が、まるで南アメリカの蝶のように、羽ばたきひとつで全てが変わってしまったように感じた!
前世では、ちょうどこの時期に東山裕と林馨の関係が急速に進展していた。
しかし今は、林馨が異動になり、彼と近くで接触することもできなくなった……
もしかして、自分が邪魔をしないことで、彼らの関係を深める触媒が失われたのかしら?
「奥様、時間がありません。社長がお待ちですので、早く出発しましょう。」山田大川の催促の声が彼女の思考を中断させた。
海野桜は本当は行きたくなかったが、東山裕が明らかに林馨を連れて行くつもりはなく、誤解を解くためには、自分が行くしかなかった。
行くことにしよう。東山裕を怒らせて、余計な面倒を招くのは避けたい。
それに、彼に協力しなければ、離婚もスムーズにいかないだろう。
海野桜は何も準備せずに、山田大川について行った。
パーティー会場のホテルに着くと、メイクルームに案内され、着替えとメイクをすることになった……
東山裕は彼女のために高級なドレスと贅沢なジュエリーを用意させていた。
彼女は、これらの用意された物が、本来は林馨のために準備されていたものなのかどうか分からなかった。
でも、ジュエリーは違うはずだ。あまりにも高価すぎるから。
東山裕も林馨にこんな物を贈って、パーティーに連れて行き、みんなに誤解を与えるほど愚かではないはずだ。
前世では、林馨は秘書という立場で彼に同行したはずだ。
おそらくパーティーで、お酒も入って雰囲気も良くて……そして二人が意気投合して、その夜一緒になったのだろう。
あるいは、その時の林馨がパーティーで華やかに着飾り、東山裕の目を奪い、そして夜に二人は……
「奥様、メイクが終わりました。いかがでしょうか。」メイクアップアーティストの嬉しそうな声が、彼女の妄想を中断させた。