柴田治人は林馨のことを少し同情したものの、彼女は解雇されなかったので、この結末も悪くないと思い、それ以上何も言わなかった。
そもそも彼がここに来たのは、東山裕と対策を相談するためだった。
対策はすでに考えていた。
柴田治人は唇を曲げ、魅力的な涼しげな目に少し揶揄の色を浮かべた。
「一番いい解決策は、お前と奥さんが力を合わせて誤解を解くことだと思う。例えば、ラブラブアピールとか……」
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海野桜は朝早く目覚めると、彼女と東山裕が離婚するという話が漏れ出ていることを知った。
彼女は驚き、誰が漏らしたのか分からなかった。
少なくとも東山裕ではない。彼は離婚したくないのだから、情報を漏らすはずがない。
林馨だろうか?
昨日、彼女が東山裕に協議書を渡したとき、林馨もその場にいて、おそらく見たのかもしれない。
しかし証拠がないので、ただの疑いに過ぎなかった。
ただ、離婚の話が皆に知れ渡ってしまったので、離婚するのは簡単ではなくなった。
案の定、海野桜はすぐに祖父からの電話を受けた。
「桜、お前と裕が離婚するという話は一体どういうことだ?」浜田統介は厳しく尋ねた。
海野桜は本当のことを言う勇気がなく、「おじいちゃん、私も何が起きているのか分からないの。私もついさっきこの話を知ったばかりよ」
説明に苦労するかと思いきや、老人の口調が突然変わった。
「これは絶対に誰かが意図的にデマを流しているんだ。裕の会社を攻撃するためだな」老人は突然確信に満ちた様子で言った。
海野桜は一瞬戸惑い、頷いた。「そうね、これはデマよ……」
「ハハハ、彼らは知らないだろうな。お前が裕と絶対に離婚するはずがないということを。だから、おじいちゃんはニュースを見た瞬間に偽物だと分かったんだ!」
海野桜:「……」
ニュースは本当なのに。
「あの馬鹿どもめ、デマを流すにしても調べもしないで。私の孫の桜が裕と離婚するはずがない。まあ、お前たちを知っている人なら、誰も信じないだろうがな」
「そうね……」
老人はしばらく話を続けた後、彼女を慰めた。「裕の会社のことは心配するな。あいつは有能だから、うまく対処できるはずだ」
彼女は全然心配していない!
「分かってるわ、おじいちゃん」