そして一目で、海野桜が彼の机の前に座って、真剣に本を読んでいるのが見えた。
彼女の前には、乱雑に積み重ねられた大量の本があった。
東山裕が近づいてみると、それらは全て建築学に関する本だった。
ほとんどが図版付きの本だった……
彼女が今読んでいたのは、世界各地の建築大全集だった。
東山裕は嘲笑い、指で机を軽く叩いた。
海野桜は急に顔を上げ、彼を見て驚いた様子で「いつ入ってきたの?」と聞いた。
「見せかけの勉強なんかする必要ないよ。どれだけ見ても、君には理解できないだろう」と東山裕は容赦なく言った。
海野桜は今になって気づいた。東山裕は実は毒舌家で、前世では彼に目が眩んでいて、この嫌な性格の重大な欠点に全く気付かなかったのだ!
本を閉じながら、彼女は冷淡に言った。「私が理解できるかどうかは、あなたが心配することじゃないわ」
立ち上がり、さらに挑発的に言った。「それに、私は見せかけが好きなの。あなたに何ができるっていうの?」
東山裕はまた嘲笑って、「海野桜、君はいつもこんなに我儘なのか?」
「そうよ、私はこんなに我儘。今日初めて私を知ったの?」
東山裕は笑みを消し、冷たい声で言った。「そうだな、君を知った最初の日から、君の我儘は見せつけられたよ!」
彼らが出会った最初の日、海野桜は完全に彼に魅了されてしまった。
食事の時も彼の隣に座りたがるだけでなく、彼と一緒に歩き、彼の家に泊まりたがった。
東山裕は当時、彼女の無遠慮な態度に驚かされた。
海野桜は過去の愚かな自分を思い出し、恥ずかしさと怒りを感じた。「安心して、私はあなた以上に昔の我儘な私を憎んでいるわ!でもこれからは、私の我儘をあなたのために無駄にすることは絶対にないわ!」
そう言って、彼女は図版集を持って立ち去ろうとした。
東山裕は突然彼女の手首を掴み、彼女の体を引き寄せた。
「何するの?」海野桜は不満そうに眉をひそめた。
男は彼女の手にある図版集を見つめて、「何を持っている?」
彼女が持っていたのは、彼のデザイン作品集だった。
海野桜は厚かましく答えた。「目が見えないの?私が何を持っているか分からない?」
「私の物を置いていけ」男は命令するように言った。