海野桜は東山裕に手洗い場に連れて行かれ、洗面台の前に立った。
彼は蛇口をひねり、彼女の腕を引っ張って、火傷した箇所を水で冷やした。
海野桜は彼の行動に驚いた。
彼は何をしているの?
彼女のことを心配しているの?
東山裕は彼女の腕を見つめながら、低い声で尋ねた。「どう?痛くないか?」
「……」海野桜は答えなかった。
彼は不思議そうに顔を上げ、彼女の呆然とした目と目が合った。
「聞いているんだ。どうなんだ?」彼は再び尋ねた。
海野桜は我に返り、首を振った。「大丈夫です。」
そう言って、彼女は腕を引き、ペーパータオルを取って腕を拭いた。
東山裕は彼女の胸元のコーヒーのシミに目をやり、思わず尋ねた。「他にも火傷したところはないのか?」
「ありません。本当に大丈夫です。」海野桜は普通の口調で、むしろ気にしていないような様子だった。