第57章 お嬢様は外出しました
海野桜と彼らはすぐに空港へ向かった。
飛行機が離陸――
窓の外を見ながら、海野桜は思わず考えた。おそらく次に戻ってくる頃には、東山裕は彼女との離婚の準備ができているだろう。
……
福岡市、東山ビル。
東山裕は会議室で会議中だった。
朝とは異なる態度で、今の彼は顔色が暗く、放つ空気が場にいる全員を息苦しくさせていた。
発言する幹部たちは皆緊張し慎重で、少しでも気を抜けば彼の怒りに火をつけてしまうのではないかと恐れていた。
彼らは、彼が何故機嫌が悪いのか知らなかったが……
長く重苦しい会議がようやく終わった！
全員が次々と退室し、東山裕だけが座ったままだった。
彼は少し目を伏せ、また昼に海野桜が彼の面子を潰したことを思い出さずにはいられなかった。
あの忌々しい女！
本当に恩知らずだ！
「社長……」林馨の声が突然彼の思考を中断させた。
東山裕は目を上げ、冷たい声で「何か用か？」と言った。
林馨は微笑んで言った。「お昼に柴田社長にお会いしました。あなたに用事があるようでした。」
「分かった。」東山裕は淡々と答え、彼女が伝えたことにまったく関心がないようだった。
林馨は彼の態度を見て、一瞬暗い表情を見せた。
しかし彼女は空気を読んで退出せず、勇気を出して気遣うように尋ねた。「社長、機嫌が悪そうですが、コーヒーをお入れしましょうか？」
東山裕は漆黒の目で彼女を見つめ、無表情で言った。「林課長は暇なようだな。先ほど割り当てた業務を忘れたのか？」
林馨のまつ毛が震え、心の中で急に悲しくなった。彼が彼女にこんなに冷たい態度をとるとは思わなかった……
以前はこうではなかった。
以前は彼女を少し重要視していたようで、少なくともこんな態度ではなかった。
林馨は辛そうに俯き、声も少し悲しげに「申し訳ありません。すぐに仕事に戻ります。」と言った。
そう言って、彼女は唇を噛みながら寂しげに退室した。
東山裕は彼女の反応に気付いていなかった。今の彼の頭の中は、海野桜をどう懲らしめるかということでいっぱいだった！
今日は久しぶりに彼女に優しくしようと思ったのに、彼女は全く感謝しない！
東山裕は誓った。この人生でこんな屈辱を受けたことは一度もない……
忌々しい海野桜め、なぜいつも色々な方法で彼を怒らせるのか？