東山裕の気配が一瞬で冷たくなった。
彼は何も言わず、携帯を取り出して海野桜に電話をかけた。
「もしもし……」電話はすぐに繋がり、向こうから海野桜の冷たい声が響いた。
東山裕は冷ややかな声で、「誰の許可を得て勝手に外出した?すぐに戻って来い!」
海野桜は目を転がした。彼は未だに彼女を昔のように、呼べば来て追い払えば去る海野桜だと思っているのか?
「申し訳ありませんが、私が私自身に許可を出したんです。あなたに口出しする権利はありません。それに、どうやって転がって帰ればいいのか分かりませんので、よければ実演してみてください。」
「海野桜——」東山裕は声を暗くして、「それはどういう態度だ?」
「あなたが嫌いだという態度です。」
瞬間、冷たい携帯越しでも、海野桜は彼から放たれる鋭い威圧感を感じることができた。