第70章 泣く林馨

林馨は一瞬固まった。

彼女はそうだったのか?

東山裕は淡々と言った。「心を込めたからといって、必ずしも上手くいくとは限らない。でも、心を込めることは間違いではない。今回の君の仕事は良かった。ただ、これからのデザインでも初心を忘れないでほしい」

「……」林馨は呆然として言葉を失った。

「初心を忘れるな」というその四文字は、彼女の心に大きな衝撃を与えた。

もしかして今回、彼女は初心を忘れてしまったのだろうか?

彼女の初心とは何だったのか?

優れたデザイナーになることであって、東山裕の機嫌を取ることではなかった……

今回、東山裕の気を引こうと焦るあまり、彼女のデザインも浮ついたものになってしまった。

しかし、彼女自身にはそれが分からなかった。

東山裕は彼女がまだ理解していないようだと見て取り、これ以上説明せずに「用事がなければ下がっていいよ。次回また規則を守らなければ、規定通りの処分を下す」と言った。

「はい……」林馨は頷き、呆然と部屋を出た。

東山裕が問題の所在を教えてくれたとはいえ、彼女の心はまだ痛んでいた。

何をやっても優秀だった彼女が、初めてこんな大きな失敗をしたのだから、その落胆ぶりは想像に難くない。

さらに辛かったのは、今回のデザインコンテストで社長の賞賛と注目を再び得られると思っていたことだ。

しかし……まったく逆効果だった。

林馨は最近何をしても彼との距離が縮まらないことを思い、心が苦しくなった。

ただ彼に近づきたいだけなのに、なぜこんなにも難しいのか……

様々な悲しみを抱えた林馨は、一人で階下の花壇の縁に座って泣いていた。

初めてこれほど好きになった人なのに、求めることも近づくこともできない。その心の痛みは、本当に辛くて辛くてたまらなかった。

そして彼女にできることは、一人で悲しみに暮れることだけだった……

時々東山裕と話をしに来る柴田治人は、泣いている林馨を一目で見つけた。

彼は一瞬驚き、そして近寄っていった。

「林さん、ティッシュはいかがですか?」柴田治人はティッシュを差し出した。

林馨は驚いて顔を上げ、彼だと分かると慌てて背を向けて涙を拭った。

柴田治人はしゃがみ込んで、彼女の可哀想な様子を見て同情を覚えた。「どうして君はいつも泣いているんだ?また誰かにいじめられたのか?」