「入賞できなかったの?」柴田治人が再び尋ねた。
林馨は哀れっぽく首を振った。「4位だった……」
柴田治人は思わず笑みを浮かべ、林馨の顎を上げながら笑って言った。「林さん、『東方』にはどれだけのデザイナーがいるか知っていますか?」
林馨は彼の軽薄な態度に少し不満そうで、彼の手を避けながら淡々と言った。「もちろん知っています」
柴田治人は急に深い眼差しになり、「東方のデザイナーは数え切れないほどいて、みんな実力があります。でもあなたは入社して間もないのに、去年は特等賞を取り、今年も4位に入賞した。何百人ものデザイナーを打ち負かしたんですよ。まだこんなに若いのに、自分がどれだけすごいか分かっていないんですか?」
林馨は自信なさげに尋ねた。「私、本当にすごいの?」
「もちろんです。あなたは私が出会った中で最も優秀で、最も努力家な女性です」柴田治人はティッシュを取り出し、優しく彼女の涙を拭った。「だから泣かないで。こんなに優秀なあなたが泣くなんて、他のデザイナーは生きていけなくなりますよ。ああ、私も生きていけない」
林馨は思わず噴き出して笑った。「柴田社長、私をからかっているんですか?」
「美人には本当のことしか言いません。特に優秀な美人には」
彼の熱い視線に気づいた林馨は思わず顔を赤らめ、恥ずかしそうに俯いた。
柴田治人の笑みは更に大きくなった。
彼は本当に、林馨がますます可愛くなっていくのを実感していた。
こんなに優秀で美しく、そして可愛い女の子がいるなんて……
その時、少し離れた場所にいた海野桜は、彼らの様子を目にしていた。
彼女は柴田治人を知っていて、柴田治人が林馨を慰めている様子を見て、複雑な気持ちになった。
前世では、東山裕だけでなく、柴田治人も林馨のことを好きだった。
今世でも、柴田治人は彼女を好きになるのだろう。
でも、あの女の子はどうなるの……
海野桜の脳裏に、丸顔で非常に可愛らしい女の子の姿が浮かんだ。
彼女のことを思うと、海野桜の心は複雑な思いで一杯になった。
彼女も自分と同じように、前世ではとても不幸だった……
今世では自分は東山裕を諦め、悲惨な運命から逃れることができた。
あの女の子も同じようになれることを願う。
海野桜は心配事を抱えながらビルに入り、最上階へと向かった。