秘書は首を振って、「いいえ。みんな不思議がっていました。なぜ社長が特等賞を選ばなかったのかって。特等賞はまだ選ばれていないんじゃないかと噂している人もいます」
ということは……東山裕は本当に特等賞を彼女に与えたの?
でも彼女は分かっていた。彼女の作品が一番良かったからではなく、他の人の作品が全て彼の要求に達していなかったからだろう。
山田大川が言ったじゃない、全ての賞に必ずしも受賞者がいるわけではなく、東山裕の認めを得なければならないと。
彼が認めてこそ、受賞できるのだと。
とにかく、受賞できたからいいのだ。
海野桜は長居せずに立ち去った。
東山裕が目覚めた後、秘書は昼食を彼に渡した。
彼は何も言わず、食事を済ませるとすぐに会議を開き、デザインチームを結成した。
チームメンバーは、今回のデザインコンテストで彼が認めた人々で、林馨も含まれていた。
そして彼らの任務は、入札が成功した後、より詳細で包括的なデザインを行うことだった。
みんな、今回の入札用の作品は受賞作品の中から選ばれると思っていた。
しかし、設計図を受け取った時、全員が驚いた。
受賞作品から選ばれたものではなかった……
設計図は東山裕の手によるものだったが、彼のスタイルではなかった。
しかし、一つだけ疑いの余地がないことがあった。それは、彼が彼らに渡した設計図が完璧だということだ。
基本的な技術も、構想も、どこにも欠点が見つからなかった。
社長が特等賞を選ばなかったのも納得だ。もっと素晴らしい作品が彼の目に留まっていたのだから。林馨もその設計図を見て、かなりショックを受けた。
彼女がデザインしたものは、本当にそんなにダメだったのだろうか?
誰がデザインしたのか聞きたかったが、彼女には勇気がなかった。
幸い、誰かが彼女の代わりに尋ねてくれた。
「社長、これは誰がデザインしたものか教えていただけますか?社長のスタイルのようでいて、そうでもないように見えます」
みんな好奇心に満ちた目で彼を見つめ、答えを待っていた。
東山裕は性格は冷たいものの、社員には優しかった。