第73章 唯一の趣味は恋愛

彼女は東山裕の笑顔を見つめながら、大切なものを失ったかのように心が重くなった。

ずっと、海野桜は社長に相応しくないと思っていた。

すぐに離婚するだろうと思っていた……

でも今は、事態が自分の思っていたようではないと感じている。

もう彼を手に入れる機会はないのだろうか?

そう考えると、林馨は息ができなくなるような感覚に襲われた。

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海野桜は「東山」を出た後、別の場所へ向かった。

職業適性診断を受けに行ったのだ!

自分の興味や趣味を見つけ出して、その方向に向かって頑張りたかった。

しかし結果は……

【浜田さん、現時点では、あなたには特に趣味がないようですね。唯一の趣味は……恋愛?】

診断士の言葉と、信じられないという表情を思い出し。

海野桜は地面に穴があったら入りたいくらいだった!

きっとこの世界で、彼女だけが変わり者で、唯一の趣味と追求が恋愛なんだろう!

もっと恐ろしいことに、今では誰の男性にも興味が持てなくなり、唯一の追求さえも失ってしまった!

とにかく海野桜の気持ちは落ち込んでいた。

そう、彼女はとても悲しかった。人生に迷いが生じたからだ。

前世では、彼女の人生の唯一の目標は東山裕を愛することだった。

今世では彼を愛していない、完全に生きる目標を失ってしまった。

何をすべきか、どんな夢を持つべきか、何のために頑張るべきか分からない。

食べて寝るだけの生活で、生ける屍と何が違うのだろう?

ニートよりも劣っている。ニートは寝て食って死ぬのを待つという人生の目標があるのだから。

そんな考えすら持てない!

……

海野桜が別荘に戻ると、人形のようにソファに足を組んで寄りかかっていた。

張本家政婦が何かあったのかと尋ねても、彼女は首を振るだけで何も言わなかった。

ずっとその状態で、張本家政婦を心配させた。

最後に東山裕が会社から帰ってきても、彼女は同じ状態だった。

海野桜の様子を見て、東山裕は少し困惑した。

張本家政婦が自ら説明しに来た:「旦那様、奥様があなたにお弁当を届けて帰ってきてから、ずっとこの状態です。もう何時間も経ちました。聞いても何も話してくれず、どうしたのか分かりません。」

東山裕はさらに困惑した。

彼は袖をまくり上げ、淡々と尋ねた:「医者は呼んだのか?」