「別に……」海野桜は彼と話す気も起きなかった。
東山裕は彼女がこんな状態なのを初めて見た……まるで生きる気力を失ったかのようだった。
彼の印象では、海野桜はいつも理不尽な振る舞いをするか、わがままな性格だった。
生きる気力を失うなんて、彼女らしくない。
「別にって、そんな死にそうな顔して?」東山裕は表情を引き締めた。「一体何があったんだ?」
「何でもない。」
「海野桜、何かあるなら言えよ。さもないと医者を呼ぶぞ!」
海野桜は不思議そうに彼を一瞥し、立ち上がって淡々と言った。「余計なお世話よ。」
そう言って、彼女は階段を上がっていった。
東山裕は少し憂鬱になった。彼女は自分が彼女の面倒を見たいと思っていると思っているのか?!
彼女の後ろ姿を見ながら、低い声で言った。「すぐにお金を渡すよ。」
少額のお金のために、彼女に死にたくなるようなことをさせたくなかった。
海野桜は振り向きもせずに「いりません、もう欲しくありません。」
どうせもらっても意味がない、何に使うかも分からなかった。
一日中考えても、自分が何をすべきか分からなかった……
東山裕は少し驚いた。
彼女を見る目が急に深刻になった。
彼女は一体どうしたんだ?あんなに期待していたボーナスまで要らないなんて。
東山裕は夕食を済ませ、書斎で少し仕事をしてから寝室に戻った。
海野桜はすでに毛布にくるまってソファーで横になっていた。
寝ているのかどうかは分からなかったが、彼に背を向けて動かなかった。
東山裕は彼女の様子がおかしい理由を知りたくないわけではなかったが、彼女が言わない以上、無理に聞くこともできなかった。
たぶん明日には元気になるだろう。
翌日、東山裕は出かける時に海野桜に、5億円を彼女に振り込んだと伝えた。
海野桜は特に反応を示さず、ただ淡々と「ああ」と答えた。
東山裕は彼女を一瞥してから会社へ向かった。
海野桜は家で何もすることがなく、何をしても気が乗らなかった。
以前大好きだった少女漫画みたいなドラマにも興味が持てなかった。
それでも一日中テレビを見ていたが、少し見ては寝る、を繰り返し、完全に意気消沈していた。
昼には東山裕にお弁当を届けるはずだったが、それも行かなかった。
東山裕はお弁当が来なかったことに、少し落胆した……