第76章 あなたに本気になり始めた

海野桜は彼が怒る理由が分からず、ただ彼が精神病だと思った。

しかし、離婚協議書が準備できていると知って、彼女の心は再び喜びに満ちた。

……

東山裕は書斎へ、海野桜は寝室へ向かった。

張本家政婦は彼らの荷物の整理を手伝っていた。

海野桜は手伝いに行き、「張本さん、東山裕の荷物を整理してください。私のは自分でやります」と言った。

「いいえ……」張本家政婦は笑顔で彼女を押しのけ、「お嬢様は旦那様の荷物を、私はお嬢様の荷物を整理します」

海野桜は笑って、「なぜ私が彼の荷物を整理しなければならないの？やっぱりあなたがやってください」

張本家政婦は再び彼女を押しのけ、暗示的に目配せをして、「お嬢様、こんな時になぜ気が付かないのですか。旦那様があなたに心を寄せ始めたのですから、あなたも何かしてあげないと」

「彼が私に心を寄せている？」海野桜は驚いた。

「そうですよ、私にも分かります。旦那様があなたに優しくしているのに、お嬢様は気付いていないのですか？」

「そんなことない！」海野桜は東山裕が自分に優しくするなんて信じられなかった。

彼は蠅を嫌うように彼女を嫌っていた。この世で、彼女を一番嫌っている人は彼だった。

たとえ彼が優しくしても、それは何も意味しない。ただの男の本性だ！

張本家政婦は全てを理解しているような表情で言った：「どうしてないのですか？医者があなたに外出を勧めたら、旦那様はすぐにニューヨークへ連れて行くことを決めました。以前は出張の時も一緒に連れて行かなかったのに、今回はあなたを連れて行くことにしたのです。気分転換させるため以外に何があるでしょうか？」

海野桜は笑って言った：「彼が私を連れて行くのは別の用事があるからです」

「どんな用事があるというのです？明らかにあなたを気分転換させたいだけです」張本家政婦はそう確信していた。「お嬢様、ニューヨークに着いたら、旦那様に色々な所を案内してもらってくださいね」

ついでに感情も深めて……

海野桜は言葉を失ったが、説明する気にもならなかった。

「張本さん、私の荷物は自分でやります」

「いいえ！」張本家政婦は再び断固として彼女を押しのけた。「あなたは旦那様の荷物を整理してください」