東山裕は歯を食いしばった。
この女は恩知らずで、本当に腹立たしい!
さっきまで彼女のことを考えていた自分は絶対に狂っていたに違いない!
先ほどの恥ずかしい行動を思い出し、彼は恥ずかしさと怒りで本を投げ捨て、さっとバスルームへ向かった!
海野桜は昼間ずっと寝ていたのに、すぐに眠りについた。
他に取り柄はないが、一つだけ得意なことがある。
横になって寝ようと思えば、すぐに眠れる。眠気を待つ必要もない。
とにかく、寝るのは一流だった……
東山裕がシャワーを浴びて出てきたとき、彼女はすでに眠っていた。
しかも寝相が悪く、片足がはみ出していた。
彼女を見つめるつもりはなかったのに、なぜか……彼女の小さな顔を見ていると、視線を外すことができなくなった。
どうせ彼女は眠っているし、アイマスクもしているから、彼が見ていることなど分からない。
彼も彼女を見つめたいわけではない、ただ多くの疑問が解けないだけだ。
最近、彼女に向き合うと、気持ちが妙に複雑になる。
とにかくこの頃、彼の感情は常に彼女に影響されている。彼女が何をしても、簡単に彼の心を揺さぶるようだ。
なぜこうなってしまったのか……
東山裕はソファの横にしゃがみ込み、深い眼差しで彼女を見つめた。
「海野桜……」彼が低い声で彼女の名を呼んでも、眠っている女性は全く反応しない。
東山裕は眉間にしわを寄せ、「一体俺に何をしたんだ?」
「……」
「なぜ俺はお前に影響されるんだ?」
なぜこんなにも嫌っていた彼女のことを、徐々に嫌いではなくなってきているのか……
なぜ離婚を固く決意していた自分が、最近になってその考えが揺らいでいるのか?
「海野桜、教えてくれ、なぜなんだ?」
海野桜は当然その理由を告げることはできない。深い眠りについているのだから。
東山裕は何かを思い出したのか、自嘲的に笑った。「まさか、俺がお前に惹かれているのか?」
そんなはずがない。
彼は彼女が大嫌いだ。一番嫌いな人間だ。
どうして突然……
でも、最近の自分の奇妙な反応をどう説明すればいいのか?
東山裕の暗い眼差しが揺らぎ、イライラしながら立ち上がってベランダへタバコを吸いに行った。
彼はタバコは好きではなく、吸う回数は指で数えられるほどだった。
しかし最近、これで二回目だ……