海野桜は無邪気な表情を作って言った。「誰が下劣かって?下劣な人に向かって言ってるだけよ。あなたに言ったわけじゃないから、自分のことだと思わないで」
明らかに彼のことを言っているのに!
ふん、下劣なおじさんだって……
彼女に何かしたとしても、当然の報いだ!
それに、おじさんって何だ?
彼はまだ25歳なのに!
東山裕は怒るどころか笑みを浮かべた。「未成年なのに下劣な女の子の方が、よっぽど恥ずべきだと思うがな!」
「あなたなんて……」海野桜は恥ずかしさと怒りで顔を赤らめた。
若気の至りで彼にしつこく付きまとっただけじゃない。
どこが下劣なのよ?!
海野桜はパンを一口かじり、冷笑しながら言った。「私は少なくとも愛する勇気も憎む勇気もある。陰で下劣なことをする偽善者よりずっとマシよ。しかも19歳の女の子に手を出すなんて、考えただけでも恐ろしい!」
「その19歳の女の子は、12歳の時から今は下劣だと言っているおじさんと結婚したがってた。18歳で彼のベッドに入ったんだぞ!」
「あなたが先に誘惑したのよ!」海野桜は怒って反論した。
東山裕は一瞬固まった。「何だって?」
海野桜は目を見開いて言った。「あなたが先にそうしたのよ!」
「つまり、俺が酔って君に手を出したって言いたいのか?」東山裕は冷笑しながら問い返した。
「そう、あなたが先に手を出したの」
「ふん……笑わせるな。俺が君に手を出すわけないだろう?」東山裕はまるで荒唐無稽な話を聞いたかのように立ち上がり、暗い目で彼女を見つめた。「その時君は成人してたよな。抵抗する力も判断する力もあったはずだ。それに、なぜ今まで一度も弁解しなかった?」
「……」
「今更自分を正当化しようとしても遅いぞ。でも君がそれほど俺を愛してるなら、今から積極的になってくれても拒まないよ。妻の要求を満たすのも、夫としての義務だからな」邪悪な笑みを浮かべながら言い終えると、彼は大股で部屋を出て行った。
海野桜は憂鬱で食べ物も喉を通らなくなった。
本当に彼が先に手を出したのに……
もし彼が突然キスをしてこなければ、彼女だってもっと欲深い考えなんて……持たなかったはずなのに。
でも彼はきっと覚えていない。だから彼女も弁解しなかった。
結局、彼と関係を持つかどうかを決めたのは、彼女自身だから。
……