第104章 私は福岡市に残ります

海野桜はベーコンを切る動作を一瞬止めた。

張本家政婦が誤解していることは分かっていた。昨夜、彼女と東山裕の間で何かあったと思い込んでいるのだ。

実際には何もなかった。

東山裕は犬に変身して、一晩中彼女に噛みついていただけだ!

でも、そんなことは説明できない。

海野桜は朝食を済ませると外出した。

留学の件を早く決めて、ここから早く離れたかった。

そして、彼女を助けられる唯一の人物は、おじいちゃんだった。

しかし、老人は彼女の要望を聞くと、考えもせずに拒否した。

「だめだ、留学は認めない。大学に行くなら、福岡市で探しなさい」

海野桜はおじいちゃんがこう答えることを予想していた。彼女は既に言い方を考えていた。

「おじいちゃん、私が一番得意なのは外国語で、他には何もできないの。海外で勉強することで、私の長所を活かせるのよ」