第122章 喉が渇いた

東山裕は世界的に有名なデザイナーだ。

彼の指導を受けられるなんて、まさに天にも昇る思いだ。

普段は人に指導することなど滅多にないのに、今日は小学生に教えるかのように海野桜に接している。

それなのに彼女は不満げだ!

こんな貴重な機会を無駄にしているとは!

海野桜はそんなことも知らず、せっかちに彼を急かした。

「続けてください。残りは少ないんですから、早く終わらせて図面を描きに行きたいんです」彼女は急いで仕事を終わらせたがっていた。

東山裕は彼女の心中を察し、急に表情を曇らせた。

彼女はそんなにも早く離婚したがっているのか……

「今日はここまでだ。明日続きをやろう!」彼は突然陰鬱な声で言った。

海野桜は戸惑った。「どうしてですか?残りは少ないんですから、今日全部終わらせた方がいいじゃないですか?」

「喉が渇いた。今日はもう続ける気分じゃない!」

「お水を持ってきます」海野桜は立ち上がって水を取りに行こうとした。

東山裕は突然彼女の手首を掴み、力を込めると、彼女は彼の腕の中に引き寄せられた!

海野桜は驚いて「何をするんですか?」

男の瞳は妖しく暗く輝いていた。「ここにあるじゃないか。何を取りに行く必要がある?」

「どこにあるんですか?」

海野桜が振り向いて見ようとした瞬間、また引き寄せられ、男性の熱い唇が押し付けられた——

海野桜は驚愕して目を見開いた。

東山裕は彼女の後頭部を押さえ、激しいキスを浴びせかけ、考える暇も与えなかった。

海野桜は確かに呆然としていて、頭の中が真っ白になった。

反応することすら忘れていた……

「あっ!」突然小さな悲鳴が上がり、一人の社員が彼らの行為を目撃して、驚いて逃げ出した。

海野桜もはっと我に返り、全力で東山裕を押しのけた!

「バタン——」東山裕は不意を突かれ、椅子もろとも床に転倒した。

海野桜も一緒に転んでしまった。

ただし、東山裕の上に強く押し付けられる形で!

「うっ……」男は呻いて、不満げに文句を言った。「海野桜、夫を殺そうっていうのか?」

「自業自得です!」海野桜は恥ずかしさと怒りで立ち上がり、気が済まないように彼を蹴って、そのまま走り去った。

東山裕:「……」

今、蹴られたのか?

初めて誰かに蹴られた!

まあいい、仕返しなんてする気は全くない。