突然、濃厚な料理の香りが漂ってきて、海野桜は思わず唾を飲み込んだ。
まあ、確かにちょっとお腹が空いているかも……
東山裕は彼女の大好物の肉団子を取り分けて、「食べなさい。会社の規定では午後1時半から勤務だから、ゆっくり食べる時間はたっぷりあるよ」
だから昨日のように急いで食べないでほしい。
海野桜は彼の言外の意味が分からず、大きな口で食べ始めた。
「美味しい、すごく美味しい!」美味しさに幸せを感じて、海野桜は泣きそうになった。
東山裕は思わず笑みを浮かべ、「そんなに頑張っているんだから、好きなものを毎日食べさせてあげるよ」
「いやです!」海野桜は断った。
「どうして?」
「毎日食べたら、いつか飽きちゃいます。そうなったら何を食べても興味がなくなっちゃう」
「……」東山裕は頷いて、「そうだね。でも食堂の料理が好きじゃないみたいだから、明日からメイドに弁当を持ってこさせようか」