海野桜は嫌そうに言った。「彼は私の心の中では、ゴマ粒ほどの価値もないわ」
「桜ちゃん、冗談でしょう?」橋本友香は笑い出した。「誰でも知ってるわ。東山裕は福岡市で一番優秀で裕福な男性よ。若くてハンサムだし、あなたが彼と結婚するなんて、本当にラッキーじゃない!」
海野桜は可笑しそうに笑った。「あなたが私の立場だったら、そうは思わないわよ」
東山裕と結婚すると、命を危険にさらすことになるのよ!
橋本友香は不思議そうに尋ねた。「どうして?あなたと東山裕って、仲が悪いの?」
「うん、仲が悪いわ。私たち、いずれ離婚することになるわ」
「えっ?」橋本友香は驚いた。
海野桜は詳しく説明したくなかったので、笑いながら言った。「また機会があったら説明するわ。さあ、買い物を続けましょう。あれ、あれは何?」
近くの池のほとりで、学生たちがテレビ番組を撮影しているようだった。
橋本友香は見て、微笑んだ。「自主制作映画を撮ってるのよ。私のクラスメイトたちよ。毎年撮影の課題があって、期末の個人成績に含まれるの。今学期は、まだ何を撮るか決めてないわ」
「何を撮りたいの?」海野桜は尋ねた。
橋本友香は首を振った。「まだ決めてないの。簡単すぎるのは嫌だし、適当に済ませたくもないわ。でも映画を撮る技術が足りなくて、意味のあるものを撮りたいんだけど」
「ドキュメンタリーを撮ってみたら?」海野桜は提案した。
「それも考えたけど、素材が必要なのよ。撮影素材が見つからないし、資金も問題で、ドキュメンタリーを撮るのは難しいわ」
結局、彼らは学生だから、多額の費用は負担できないし、人脈もない。
海野桜は目を輝かせて笑った。「最近、東山が施設の新しい建物を設計してるんだけど、これを撮影してみない?」
橋本友香の目が輝いた。「施設の移転の様子を撮るってこと?」
「そう!今の施設の建物はとても古くなってるから、新しい建物に引っ越したら、子供たちはきっと喜ぶわ!」
「それはいいアイデアね!設計の初期段階から撮影できたら最高ね」
でも次の瞬間、橋本友香は困った表情を見せた。「東山の社内で撮影するなんて、無理でしょう?」
「私が東山裕に聞いてみるわ。彼が同意すれば問題ないわよ」海野桜は気さくに言った。
橋本友香は心の中で感動したが、彼女に迷惑をかけたくなかった。