第125章 小棠、血を流してる

彼女が気付かなかったのは、遠くから黒い人影がゆっくりと近づいてきていたことだった。

海野桜はすぐに車を持ってきた。

しかし、橋本友香の姿が見当たらなかった。

1分もかからない間に、どこへ行ってしまったのだろう?

彼女は不思議に思いながら車を降り、「友香さん、どこにいるの?」と呼びかけた。

周りからは返事がなかった。

海野桜は携帯電話を取り出して電話をしようとしたが、いつの間にか電池が切れていることに気づいた。

海野桜が少し焦り始めた時、かすかな助けを求める声が聞こえた。

「助けて、んん、助けて……」

これは……友香さんの声!

海野桜は顔色を変え、急いで車から懐中電灯を取り出して点け、声のする方向へ走っていった!

ここは大学の近くで、福岡大学の周辺は少し人気のない場所で、夜になるとさらに人通りが少なくなる。