第125章 小棠、血を流してる

彼女が気付かなかったのは、遠くから黒い人影がゆっくりと近づいてきていたことだった。

海野桜はすぐに車を持ってきた。

しかし、橋本友香の姿が見当たらなかった。

1分もかからない間に、どこへ行ってしまったのだろう?

彼女は不思議に思いながら車を降り、「友香さん、どこにいるの?」と呼びかけた。

周りからは返事がなかった。

海野桜は携帯電話を取り出して電話をしようとしたが、いつの間にか電池が切れていることに気づいた。

海野桜が少し焦り始めた時、かすかな助けを求める声が聞こえた。

「助けて、んん、助けて……」

これは……友香さんの声!

海野桜は顔色を変え、急いで車から懐中電灯を取り出して点け、声のする方向へ走っていった!

ここは大学の近くで、福岡大学の周辺は少し人気のない場所で、夜になるとさらに人通りが少なくなる。

周りは緑が多く、友香さんの声はその緑地帯から聞こえてきた。

海野桜が中に飛び込むと、真っ暗で恐ろしい雰囲気だった。

危険も顧みず、声を頼りに突き進むと、懐中電灯の光の中で、キャップを被った男が友香さんに暴行を加えているのが見えた!

海野桜は血が上り、飛びかかって思い切り懐中電灯を男の頭に叩きつけた。

「あっ!」男は痛みで叫び、振り向いて彼女に襲いかかろうとした。

海野桜は幼い頃から軍隊で育ち、格闘技の心得があった。

彼女は男の攻撃を巧みにかわし、さらに力いっぱい押し倒した。

「友香さん、逃げて!」海野桜は叫んだ。

橋本友香は全身の力が抜け、震えながら立ち上がり、一歩走り出したところを男に足首を掴まれた。

「きゃあ……」友香は再び地面に倒れた。

海野桜は怒りに任せて男の腹を踏みつけた。「人でなし、死んじまえ!」

しかし男は彼女の足を掴み、強く引き倒した。

海野桜は額を地面に打ち付け、痛みで目が回った。

「桜ちゃん!」友香が叫んだ。

その叫び声に男が良心の呵責を感じたのか、それともこれ以上何かするつもりがなかったのか、立ち上がるとすぐに逃げ出し、あっという間に姿を消した。

橋本友香は急いで海野桜を起こした。「桜ちゃん、大丈夫?」

海野桜は痛みに耐えながら、「大丈夫、友香さん、早くここを離れましょう……」

危険すぎる!

「うん!」