彼女が気付かなかったのは、遠くから黒い人影がゆっくりと近づいてきていたことだった。
海野桜はすぐに車を持ってきた。
しかし、橋本友香の姿が見当たらなかった。
1分もかからない間に、どこへ行ってしまったのだろう?
彼女は不思議に思いながら車を降り、「友香さん、どこにいるの?」と呼びかけた。
周りからは返事がなかった。
海野桜は携帯電話を取り出して電話をしようとしたが、いつの間にか電池が切れていることに気づいた。
海野桜が少し焦り始めた時、かすかな助けを求める声が聞こえた。
「助けて、んん、助けて……」
これは……友香さんの声!
海野桜は顔色を変え、急いで車から懐中電灯を取り出して点け、声のする方向へ走っていった!
ここは大学の近くで、福岡大学の周辺は少し人気のない場所で、夜になるとさらに人通りが少なくなる。