第136章 もう離婚するのに

「お父さん、お母さん、こんにちは」海野桜は東山裕とまだ正式に離婚していなかったため、以前の呼び方を続けるしかなかった。

しかし、彼女の丁寧な態度からは、本当に離婚を考えていることが明らかだった。

鴻野美鈴はまったく気にせず、彼女の手を引いて色々と尋ね、とても親しげだった。

東山秀造は背が高く威厳があり、今は年を取っているものの、依然としてハンサムだった。

東山裕の容姿は彼に少し似ており、父子ともに特に高い鼻筋をしていた。

「最近会社でデザインの仕事をしているそうだね?」東山秀造が突然尋ねた。

海野桜は義父に対面するたびに、無意識に畏敬の念を抱いていた。「はい、でも一つのプロジェクトだけです」

「この前のニューヨークの入札作品も、君がデザインしたのかい?」

「全部ではありません」

東山秀造は頷き、賞賛して言った。「この分野では君には才能がある。これからは裕についてしっかり学べば、きっと成功するだろう」

海野桜は少し戸惑った。彼女は東山裕と離婚するはずなのに。

鴻野美鈴は再び笑顔で彼女の手の甲を軽く叩き、「桜ちゃん、あなたはとても有能だから、お母さんからプレゼントがあるわ」

彼女はテーブルの上の精巧なジュエリーボックスを取り、開けた——

海野桜は中の豪華で大きなルビーのネックレスの輝きに目を奪われた。

鴻野美鈴は嬉しそうに言った。「このネックレスはイギリス王室から伝わってきたものよ。素敵でしょう?これをあなたにあげるわ。これからも素敵なジュエリーを見つけたら、お母さんが買ってあげるわ」

「これは……」海野桜はとても驚いた。彼女は東山裕と離婚するはずなのに。

彼らは知らないのだろうか?

鴻野美鈴はネックレスを取り出し、「さあ、付けてあげるわ」

「お母さん……」海野桜は慌てて止めた。「こんな素敵なものを下さって感動しますが、受け取れません」

「どうして?」

海野桜は彼らを見て、躊躇いながら尋ねた。「私は東山裕と離婚することになっているのに……」

鴻野美鈴たちは確かにこのことを知っていて、少しも驚かなかった。