「桜ちゃん——」突然、鴻野美鈴の声が響いた。
海野桜が横を向くと、彼女と東山裕の父親、東山秀造の姿が見えた。
二人は電話を受けるとすぐに駆けつけてきたのだ。
「桜ちゃん、裕はどうなの?」鴻野美鈴は彼女の手を取り、緊張した様子で尋ねた。
海野桜は首を振った。「分かりません。まだ救命中です」
「一体どうなってるの?電話で裕が爆弾に巻き込まれたって聞いて、魂が抜けそうになったわ!」いつも優雅な鴻野美鈴だが、この時ばかりは落ち着きを失っていた。
海野桜の心の中で罪悪感が更に強くなった。
もし東山裕に何かあったら、両親に顔向けできないと思った。
「申し訳ありません奥様。私を助けようとして、こうなってしまったんです……」海野桜はすぐに事の経緯を説明した。
鴻野美鈴はそれを聞いても、彼女を責めることは全くなかった。