「桜ちゃん——」突然、鴻野美鈴の声が響いた。
海野桜が横を向くと、彼女と東山裕の父親、東山秀造の姿が見えた。
二人は電話を受けるとすぐに駆けつけてきたのだ。
「桜ちゃん、裕はどうなの?」鴻野美鈴は彼女の手を取り、緊張した様子で尋ねた。
海野桜は首を振った。「分かりません。まだ救命中です」
「一体どうなってるの?電話で裕が爆弾に巻き込まれたって聞いて、魂が抜けそうになったわ!」いつも優雅な鴻野美鈴だが、この時ばかりは落ち着きを失っていた。
海野桜の心の中で罪悪感が更に強くなった。
もし東山裕に何かあったら、両親に顔向けできないと思った。
「申し訳ありません奥様。私を助けようとして、こうなってしまったんです……」海野桜はすぐに事の経緯を説明した。
鴻野美鈴はそれを聞いても、彼女を責めることは全くなかった。
「桜ちゃん、自分を責める必要はないわ。これはあなたの責任じゃない。全て犯人たちが悪いのよ!ただ、裕があなたをそこまで大切に思っているなんて……」
「……」海野桜も実は驚いていた。東山裕が彼女を救うために命を顧みなかったことに。
感謝の気持ちはあるものの、それは単なる感謝の気持ちだけだろう。
鴻野美鈴は突然また怒り出した。「でも裕のやったことは間違ってるわ!爆弾の解体なんて全く分からないのに、むやみに解体しようとするなんて、お互いの命を危険にさらすだけじゃない!」
海野桜は説明しようとした。「あの時は緊急事態で……」
「彼にはその技術がある」東山秀造が低い声で言った。
二人の女性は驚いた。
東山裕が爆弾解体できるだって?!
東山秀造は淡々と説明した。「部隊にいた時、その訓練を受けていた」
海野桜は少し驚いた。だから爆弾解体に手を出したのか。
でも、あの爆弾は結局間違って解体してしまったのに……
しかし、あの時は状況が切迫していて、東山裕には考える時間がなかった。
彼には賭けに出る以外の選択肢がなかったのだ。
どうあれ、彼の賭けは成功した。
しかし海野桜は無事だったものの、彼自身が事故に遭ってしまった。
海野桜は彼に何もないことだけを願っていた。それが今の彼女の唯一の思いだった。
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1時間後、東山裕は救急室から運び出された。
海野桜たちはすぐに立ち上がって近寄った。