第193章 もう一度はじめから

「……」体の上に倒れている男は反応がなかった。

海野桜は彼を押しのけようとしたが、できなかった。

すぐに彼女は気づいた。彼らは埋もれていたのだ。

爆弾が爆発し、天井の大部分が崩れ落ち、壁も崩壊していた……

東山裕が下敷きになり、海野桜は東山裕の下に挟まれていた。

外の人々は必死に彼らを救助しようとしていた。

海野桜の頭が一瞬クラクラした。東山裕はまさか……

「東山裕、東山裕！」海野桜は必死に彼を呼んだ。本当に死んでしまったのではないかと恐れて。

しかし、東山裕はまだ反応がなかった。

海野桜は焦って泣き出してしまった。「東山裕、目を覚まして、東山裕、早く目を覚まして！」

もう彼のことを愛してはいないけれど、こんな風に死んでほしくなかった。

特に、彼女を救うために死んでほしくなかった。

こんな大きな恩を受けたくなかった！

「東山裕、目を覚まして……」海野桜は声を詰まらせ、耐えられないほど辛かった。

「ゴホッ、ゴホッ……」突然、東山裕が低い咳き込む声を出した。

海野桜は一瞬固まり、すぐに喜びに変わった！

「東山裕、死んでないの？やっぱりそう簡単には死なないわよね！」

「桜……」東山裕は彼女の耳元で掠れた声で話し始めた。「僕の、時間があまりない……」

海野桜は愕然とした。さっきまでの喜びが、氷水を浴びせられたかのように一瞬で消え去った。

全身の血液が、再び冷たくなった。

東山裕は全力を振り絞って話し始めた。「聞いてくれ。」

「……」

「君以外の女性には触れたことも、誰かを好きになったこともない……ゴホッ、誤解しないでくれ、ゴホッ……」

海野桜の心情は突然複雑になった。

死にそうなのに、どうしてまだこんなことを説明するの。

そもそも彼は説明する必要なんてない。

だって彼女はもう気にしていないと言ったのに、なぜまだ説明するの？！

「信じてくれ……」東山裕は再び口を開いた。

海野桜は頷いた。「信じてるわ、本当に信じてる！」

彼女は元々彼のことを信じていた。

彼の性格を知っているから。彼は何をするにも隠し事をしない人だから、彼女を騙す必要なんてない。

もし本当に林馨に触れていて、林馨に感情があるなら、直接林馨と付き合っているはず。

彼女の気持ちなんて気にしないはず。

だから最初から、何も疑っていなかった。