海野桜は少し驚いた。
なぜ東山裕の声なの?!
強盗たちも驚いていた。彼らがまだ要求を出していないのに、警察がこんなに協力的で、ヘリコプターとお金を用意してくれたのか?
一人の強盗が確認しに外に出て、すぐに戻ってきた。
「兄貴、本当です。ヘリコプターとお金、全部用意されています!」
強盗の頭目は大笑いした。「ハハハハ、福岡市の警察は本当に分かってるな。俺たちの時間を全く無駄にせず、全部用意してくれたぞ!」
「兄貴、罠じゃないですか?」
強盗の頭目は気にしていなかった。「人質を何人か一緒に連れて行けば、奴らも細工なんかできないさ!」
「兄貴の言う通りです!」
外にいる東山裕は再び厳しく警告した。「覚えておけ、人質を一人も傷つけるな。さもないと、お前たちは誰一人逃げられない!」
海野桜は少し俯き、複雑な心境だった。
彼女は知っていた。ヘリコプターとお金は、きっと東山裕が自分で用意したのだと。
彼は彼女がここにいることを知っているのだろう……
でも、おそらく彼の好意は無駄になるだろう。誰もここに爆弾が仕掛けられていることを知らないのだから。
前世でもそうだった。人質の一人に爆弾が取り付けられていることを誰も知らなかった。
おそらく人質自身も、自分の体に何が取り付けられているのか分かっていなかったはずだ。
警察が気付いた時には既に遅く、爆弾はすぐに爆発し、多くの死傷者が出た……
今、彼女の目と口は封じられ、体も縛られている。彼女は誰にも自分の体に爆弾があることを伝えられない。
でも、このまま手をこまねいているわけにはいかない。
海野桜は密かに両手を動かし、縄を解こうと試みた。
実際、縄を解いたとしても、彼女は死ぬかもしれない……
強盗たちが去る時に爆弾を起動させ、爆弾はすぐに爆発するだろう。
だから誰も間に合わないだろう。
でも、このまま死ぬのは、海野桜にはとても悔しかった!
強盗たちが去る前に、絶対に一か八かの勝負に出なければ!
海野桜は背後で縛られた両手を必死に動かした。
おそらく彼女の表情や行動があまりにも異常だったため、彼女の隣にいた人が疑問を抱き、命の危険を冒して、縛られた両手で密かに彼女の縄を引っ張り始めた。
海野桜は心の中で喜び、その人の動きに合わせて、二人で音もなく縄を解いた。