第222章 彼女に対して、骨の髄まで憎む

次に、彼女は彼の方を振り向いた。

柴田治人は一目で彼女の涙で潤んだ瞳と、片方が少し腫れた頬を見つけた。

橋本友香は幼い頃から愛らしく可愛らしい顔立ちで、どこか儚げな雰囲気を持っていた。

彼女が子鹿のように澄んだ大きな瞳で人を見つめる時、誰もが彼女を愛おしく思い、大切にしたくなるのだった。

特に泣いている時は、その美しさが際立った。

老若男女問わず、誰もが彼女に好感を持ちやすかった。

特に男性は。

彼女を見ると、男たちは彼女を愛しく思い、独占したく、蹂躙したくなる衝動に駆られやすかった!

この瞬間、彼女の儚げな美しさを目にした柴田治人の視線は一瞬揺らいだ。

しかし、すぐに彼の心は冷たく硬くなり、唇の端には冷ややかな嘲笑が浮かんだ。

「橋本さん、その可哀想な演技はもう通用しないよ!」彼は冷笑しながら言った。

橋本友香は一瞬固まり、目の奥に一筋の痛みが走った。

今にも溢れそうだった涙を、彼女は目を見開いて必死に堪えた!

彼の前では泣けない。彼はそれを演技だと思うだけだから。

しかし彼女のその変化は、彼にとっては演技が続けられなくなった証だった。

柴田治人は歩み寄り、冷たい黒い瞳で彼女を見つめ続けた。「残念だけど、君の本性を知っているのは世界中で僕だけだ。僕以外の全ての人は、君がこんなに可哀想で、守られ愛されるべき存在だと思っているんだろう?」

橋本友香は唇を噛み、思わず弁解した。「違います!」

柴田治人は冷笑し、鋭い眼差しで言った。「違う?違わないだろう。大野健志は君のために罪を犯し、今度は蘇我直哉が君のために婚約者まで捨てようとしている。橋本さん、君の手腕には本当に感心するよ。蘇我直哉まで誘惑するなんて!」

「違います、私は彼を誘惑なんてしていません。私は彼のことが好きじゃないんです。彼が勝手にしつこく付きまとってくるんです!」橋本友香は恥ずかしさと怒りを込めて反論した。

しかし柴田治人は既に彼女を信じていなかった。

彼は嘲笑いながら言った。「僕の前で否定する必要はないよ。君の本性は既に分かっている。結局、僕は君が誘惑した最初の男だったからね!」

橋本友香の目が震え、過去の全てを思い出し、胸が詰まる思いだった。

しかし、もう説明することは何もなかった。

どんなに説明しても、彼は彼女を信じないのだから。