柴田治人は彼女が心虚になって怖がっていると思い込んでいた。
彼は暗示的に彼女に近づき、冷たい声で言った。「でも安心しろ、俺はそんなこと広めたりしないさ!そんな過去なんて、話すだけで恥ずかしくなる。」
そう言うと、彼は冷ややかに彼女を突き放し、大股で階段を上がっていった。
橋本友香だけがその場に長い間立ち尽くしていた。
そして、彼女も多くのことを考えた……
考えたのは全て彼女と柴田治人の過去のことで、楽しかったこと、幸せだったこと、そして悲しかったことも……
16歳は少女の人生で最も輝かしい時期だと言われている。
しかし彼女の16歳以降、世界は灰色に染まってしまった。
なぜなら彼女と柴田治人の間には、もう何の喜びも残っていなかったから……
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橋本友香とは対照的に、海野桜が家に帰ると、リビングいっぱいの赤いバラが目に飛び込んできた!
テーブル、ソファー、テレビ、床、螺旋階段……
至る所に洗練されたフラワーバスケットが置かれ、鮮やかなバラの花が生けられていた。
間違った家に入ったわけではないと確信していなければ、バラ園に迷い込んだと思うところだった!
「張本家政婦、これはどういうことですか?」海野桜は驚いて尋ねた。
フラワーバスケットの手入れをしていた張本家政婦は満面の笑みで答えた。「お嬢様、これは全て東山坊様が送ってこられたものです。本当にたくさんのバラですね。9999本あるそうですよ。さっきこっそり数えてみましたが、本当にありました!」
海野桜:「……」
東山裕は気が狂ったのか!
そのとき、彼女の携帯電話が鳴った。東山裕からだった。
海野桜は電話に出た。「もしもし……」
「帰宅したか?」東山裕は上機嫌で尋ねた。「バラの花は見たか?気に入ったか?」
「気に入りません。」海野桜は正直に答えた。「なぜこんなにたくさん送ってきたんですか?」
東山裕の声色が一気に暗くなった。「君が喜ぶと思ったんだ!それとも、赤いバラが嫌いなのか?どんな花が好きなんだ?」
「私が何を好きだからって、そんなにたくさん送ってくるんですか?」海野桜は質問で返した。
「ああ——」東山裕は躊躇なく答えた。「何が好きなんだ?」