局長は心の中で文句を言いながらも、表面では丁寧な笑顔を保っていた。
「すでに交通課に調査を依頼しました。結果はすぐに出ますので、少々お待ちください」
東山裕と相良剛が彼の前に座っており、二人は終始お互いに一言も交わさなかった。
オーラは互いに引けを取らないほど強く、しかも反発し合っていた!
一目で二人の間に確執があることがわかった。
局長は賢明にも立ち上がり、「皆様こちらでお待ちください。私は少し用事を済ませてきます」
「ご苦労様です、局長」相良剛は軽く微笑んだ。
「いいえ、どういたしまして」局長は笑顔で退室し、ついでにドアを閉めた。
彼が出て行くと、すぐに部下が近寄ってきて、「局長、防犯カメラの映像が出ました。後ろの車が故意に追突したんです!」
「シーッ...」局長は慌てて声を低くするよう促し、中の人に聞こえないように気を付けた。「結果はしばらく保留にしておけ。聞かれたら、まだ調査中だと言え」
「なぜですか?」若い警官は首を傾げた。
局長は溜息をつきながら言った。「中にいる方々は、どちらも敵に回せない人物だからな。こんな些細なトラブルは、彼らに解決させた方がいい」
彼は関わりたくなかったのだ!
オフィス内で、局長が去ると、相良剛は東山裕の方を向いた。
彼の口元には薄い皮肉な冷笑が浮かんでいた。「東山裕、何年ぶりかな。あなたは少しも変わっていないね。相変わらず度量が狭い」
東山裕は怒るどころか笑い返し、遠慮なく反撃した。「久しぶりの旧知の間柄なのに、会うなり侮辱するとは、相良少佐の器量はどれほどのものか」
「旧知の間柄として、会うなり私の車に追突するあなたに、私が丁寧に接する必要があるでしょうか?」
「旧知に会って興奮して、うっかり追突しただけだ。相良少佐、そんなに小さい男じゃないだろう?」
相良剛は再び冷笑した。「つまり、故意だったと認めるんですね?」
東山裕は表情を変えず、容赦なく非難した。「故意かどうかは私にもわからない。もしかしたら相良少佐が私を違反に誘導したのかもしれない」
相良剛は眉を上げた。「私があなたを誘導した?」
東山裕は鋭い眼差しで言った。「相良少佐が私の妻に不純な意図を持って近づくから、私の心が穏やかでいられるはずがない。怒りのあまり、つい事故を起こしてしまった」