おじいさんの寝室から出てきた海野桜は、リビングに入るとソファに座っている浜田碧を見かけた。
彼女は少し驚いた。皆が帰ったと思っていたからだ。
浜田碧は雑誌を読んでいたが、彼女が出てくるのを見て、心配そうに尋ねた。「おじいさん、大丈夫?」
「大丈夫よ」海野桜は首を振り、不思議そうに聞いた。「何か用事があるの?」
そうでなければ、なぜ皆が帰ったのに彼女だけまだ残っているのだろう。
浜田碧は雑誌を置き、立ち上がって言った。「ちょっと話があるの。今日から私はしばらくここに住むことになったの。両親の要望よ!」
海野桜は少し固まった。
正直に言えば、この見知らぬ従姉妹に対して、違和感がないわけではなかった。
今、浜田碧がここに住むことになって……
海野桜の心の中の違和感はより強くなった。
でも彼女にはここに住む資格があることは分かっていた。
海野桜は頷いた。「ここに住むのは当然よ。私たちは家族なんだから」
「家族?」浜田碧は眉を上げた。
「そう。あなたもおじいさんの孫で、浜田家の一員だもの」海野桜は確信を持って言った。
浜田碧は薄く笑った。「じゃあ、私がなぜここに住むことになったか知ってる?」
「どうして?」海野桜は首を傾げた。
「両親が、東山裕に近づくように言ったからよ!」
「……」海野桜は少し驚いた。浜田碧がこんなに直接的に言うとは思わなかった。
浜田碧は腕を組んで、薄く笑いながら言った。「彼は確かに素晴らしい夫候補よね。海野桜、あなたが要らないなら私にちょうだい」
海野桜は再び目を見開いた——
浜田碧は率直に笑って、「本気よ。今すぐ、東山裕の電話番号を教えて」
「え?」海野桜は反応できなかった。
「彼の電話番号を教えて。まさか教えたくないの?」
海野桜は淡々と言った。「別に教えたくないわけじゃないわ!」
浜田碧は番号を手に入れると、颯爽と去っていった。
ずっとキッチンで盗み聞きしていた張本家政婦がすぐに出てきた。「お嬢様、どうして東山坊様の電話番号を彼女に教えたんですか。彼女が東山坊様を狙っているのを知っているのに、なぜ教えたんですか?」
「ただの電話番号よ……」