着信画面に彼の名前を見て、海野桜は少し躊躇したが、結局電話に出た。
「もしもし……」
彼女が声を出した途端、向こう側の東山裕の怒りに遮られた。
「海野桜、よくも俺の番号を他の女に教えたな?!」
海野桜は少し驚いた。浜田碧の行動が早かったのか?
「なぜ他の女に教えたんだ?」東山裕は不機嫌に問い詰めた。
海野桜はそれほど深刻な問題だとは思わなかった。「浜田碧は他人じゃないわ。」
彼女は従姉妹で、さらに……東山裕の幼い頃の婚約者でもあった。
東山裕は冷笑した。「俺にとっては、ただの他人だ。海野桜、俺の番号を他の女に教えたんだから、もうお前も掛けてくるな。」
言い終わると、東山裕は一方的に電話を切った!
海野桜は呆然とした。
電話のツーツーという音を聞きながら、彼女は妙にイライラした。
さらに怒りも感じた。
浜田碧に教えただけじゃない。彼女が欲しがったから、そんな器の小さいことをするわけにはいかなかった。
東山裕はそこまで怒ることなの?
海野桜は考えれば考えるほど腹が立った。東山裕に言いたかった、彼に電話なんかしたくないって!
いいえ、これからは彼とは一切関わりたくない。
海野桜が彼の番号をブロックしようとした時、突然また電話が来た。
今度は見知らぬ番号からだったが、市内の番号だった。
海野桜は不思議に思いながら電話に出た。「もしもし、どちら様?」
「これが俺の新しい番号だ。保存しておけ。これからはこの番号に掛けてくれ。これはお前だけが掛けられる番号だ。」向こう側の人は一気に言った。
海野桜は固まった。これは……東山裕の声?
東山裕は問い返した。「俺の言ったこと聞いてたか?この番号は他の女に教えるなよ。」
海野桜は彼の意図が分からず、淡々と言った。「必要ないわ。安心して、もう電話なんてしないから……」
「海野桜!」東山裕は諦めたように溜息をついた。「この天然娘は俺の気持ちが分からないのか?」
海野桜は眉をひそめた。彼こそバカね。
東山裕は彼女が聞く前に説明した。「俺はただお前専用の番号を作りたかっただけだ。この番号は、他の女は誰も持っていない。」
「……」海野桜の目が一瞬揺れた。「そこまでする必要ないわ。」
「必要あるさ。だってお前は他の女とは違うから。」
「……」
東山裕は低く笑った。「なぜ違うか分かるか?」