離婚してからまだ2ヶ月も経っていないのに、彼女はもう落ちてしまったの?
なぜ東山裕はこんなに短い時間で彼女の心を動かすことができたのか。
前世で9年もの時間をかけても、彼の心を少しも動かすことができなかったのに?
この差を考えると、海野桜は自分の不甲斐なさにますます悔やまれた。
彼を愛していた時も、愛していなかった時も、全てが不甲斐なかった。結局最初から最後まで、彼の相手になれなかったのだ……
海野桜はこれらのことを考えながら、心の中は複雑な思いで一杯だった。
いつまた突然、彼に恋をしてしまうのか、自分でもわからなかった。
でも今世では、一つだけ確かなことがある。もう二度と彼のために全てを捨てたりはしない。
少なくとも尊厳、自分らしさ、そして学業は、絶対に手放すことはない。
だから全ては自然の成り行きに任せよう。自分のすべきことをするだけでいい。
感情のことに関しては、今は本当に考えたくない。ゆっくり考えればいい。
しかしその後の日々で、海野桜は自分の考えが単純すぎたことに気付いた。
東山裕は彼女の授業スケジュールを把握し、毎日朝、昼、夕方と、時間通りに送り迎えをしていた。
毎日、彼は彼女に最も魅力的で格好いい笑顔を見せていた。
そして女性が抵抗できない優しさと気遣いも。
しかもそれらは全て彼女一人にだけ向けられていた。
もちろん、毎日花束を贈り、高価なアクセサリーも贈っていた。
彼は少女たちの心の中の完璧な童話の王子様のように、少女が夢見る全ての完璧なことをしていた。
それどころか、もっと素晴らしく、もっと完璧だった。
海野桜は彼の連日の情熱的な攻勢に怯え、彼に会うのが怖くなっていた。
そう、彼女は彼に会うのが怖かった。これら全てが儚い幻で、また新たな悪夢の始まりなのではないかと恐れていたから。
しかし周りの人々は、皆が彼女に東山裕を受け入れるよう勧めていた!
おじいさんは言った。「桜や、裕がここまでお前に尽くす必要はないんだ。彼がこれほど努力しているということは、きっと本気なんだよ。もしまだ彼のことが好きなら、復縁したらどうだ」
張本家政婦は言った。「お嬢様、私にはよくわかりませんが!でも東山様のような素晴らしい男性は、探してもなかなか見つからないと思います!」