第249章 心の中の不安

海野桜は振り向いて、彼の深い目を見つめ、「何かあるの?」と尋ねた。

東山裕は彼女をじっと見つめ、低い声で笑いながら言った。「今日の午後は授業ないよね?」

「あるような気が...」

「時間割を見たけど、今日の午後は授業ないよ。」

海野桜は認めざるを得なかった。「ええ、ないわ。何かあるの?」

東山裕は口角を上げ、「最近、君はいつも上の空みたいだね。きっと勉強のストレスが溜まってるんだろう。明日は週末だし、どこかに連れて行って、リラックスさせたいんだ。」

海野桜はすぐに断った。「いいえ、勉強しないと...」

「だからこそ勉強させないように、遊びに連れて行くんだ。翡翠山荘、もう部屋を予約してある。今夜行こう。」東山裕は断固として言った。

海野桜は少し驚いた。

頭の中に突然、翡翠山荘の宣伝画像が浮かんだ。

梅の木の下で、男女が温泉でくつろいでいて、男性は満足げに女性を抱き寄せ、女性は幸せそうに寄り添っている。

広告コピーは:翡翠山温泉、二人で至福の時を...

そこの温泉に行く男女は、たいてい純粋な目的じゃない!

海野桜は怖くて行けなかった。「結構です。まだたくさん宿題が残ってるし、今日は図書館で勉強しないと...」

「お昼に迎えに行くから、その時に電話するよ。」東山裕は勝手に言い、彼女の抗議を完全に無視した。

「だから私は...」

海野桜が反論しようとした瞬間、彼の唇が突然彼女の唇に触れ、すぐに離れた!

海野桜は少し驚いた。

最近、彼はよく不意に彼女にキスをしてくる。最初は激怒し、怒っていたのに。今ではだんだん黙認するようになってきた...

東山裕は熱い眼差しで、「授業に行っておいで。後で迎えに行くから。」

「でも...」海野桜はまだ翡翠山荘に行かないことについて言おうとしたが、東山裕がまたキスしようとする仕草を見せたので、怖くて何も言えなくなり、急いで車から降りて、少し慌てて逃げ出した。

彼女の小うさぎのような慌てた後ろ姿を見て、東山裕は思わず低く笑った。

海野桜は足早に歩き続け、かなり遠くまで来てようやく歩調を緩めた。

まったく、最近どうして東山裕のことがこんなに怖くなってきたんだろう?